日本の製薬会社のみなさん、Tdap+IPVをティーンや成人用に作ってはどうでしょう?成人の百日咳対策にも、いままでのポリオワクチン積み残し問題(OPV二回しか行っていなかった)の対策にもなります。
皆さんは百日咳の咳を見たことがありますか?
一週間の潜伏期を置いてカタル期を1-2週間経た後、痙咳期と呼ばれる特有の咳が起こる時期になります。
以前仕事をしていた場所でのお話です。そこは咳を出すお子さんが多かったです。
昨日の続きです。
近年、成人の百日咳が問題になっています。DTPの成果で乳幼児での発症が抑えられてきた百日咳ですが、成人になるとその効力が薄れてきます。その結果、大人になってから百日咳にかかる人が増えてきました(百日咳は終生免疫ではなく一度感染しても再感染することもありますので、百日咳流行の原因はワクチンだけではありません)。学生が医学部で集団感染ということもありました。例外がありますが、成人の百日咳は概して軽症です。そのため診断が難しく、ほかの人に感染させるということもあります。
もし、感染先が自らの赤ちゃんだったらどうしましょう?赤ちゃんの百日咳は命にかかわります。
母親からの移行抗体(お母さんが百日咳に感染していると、胎盤を通して赤ちゃんに免疫ができる)があるのでは、という意見がありますが、それが確実ではないのです。移行抗体を確実にしたいというなら、母親は妊娠直前に百日咳に罹り、なおかつ抗生剤を飲んではいけないということになります。
日本ではDPT(DTaP)は生後90ヶ月までとなっていますが、海外では成人用のDPTワクチンが出ています。TdapまたはdTapと呼ばれています。dとpが小文字なのは、DTaPよりもジフテリアと百日咳の成分が少ないからです。
日本で行われているDPTワクチンも、通常量0.5mlのところ0.2mlを成人に打ったところ、効果があり安全性も確認できたということです。
http://www.jpeds.or.jp/journal/114-03.html#114030485
通常生後3ヶ月になってから打つワクチンのひとつに、DPTというのがあります。最初から、ジフテリア(diphtheria)・百日咳(pertussis)・破傷風(tetanus)の英語での頭文字からとったものです。海外では、DTPとも表現され、百日咳の成分が全細胞(whole)の場合はDTwPで、後述する無細胞または非細胞(acellular)の場合はDTaPと区別しています。もともとDPTワクチンはDTwPワクチンだけでしたので、日本でもこのワクチンで接種が行われていました。
しかし、1974年にDPTワクチンで2名の死亡事故が発生し、ほかにも有害事象が報告されました。マスコミなどによる反ワクチンキャンペーンが始まりました。1975年にはDPTのワクチンは中止になりました。3ヶ月後接種年齢は比較的安全とされる2歳以上から再開されましたが、接種率は低いままでした。
ただ、百日咳菌が根絶されたわけではないので、結果として多くの赤ちゃんやこども達が感染することとなりました。典型的な百日咳以外は診断するのは難しく統計により幅がありますが、感染者は1万人から3万人ともいわれ、死亡者数は20から113人とも言われています。1981年から改良されたDTaPワクチンとなりました。
もちろん、ワクチンの副反応(有害事象)による被害者数と、ワクチンをしなかったことによる被害者数とは、簡単に比べられるものではありません。しかし当時のマスコミは、ワクチンによる死亡と、それをしなかったことによる死亡の扱いはあまりにも違いすぎました。
これは、麻疹についてのマスコミの発言です。
我々には麻疹で何人亡くなるかということは関係ない、むしろそのワクチンで何人亡くなるかということの方が問題だ
私などは、これを初めて読んだときに血圧が上がりましたが、日赤医療センターの薗部先生は違いました。詳しくは、こちらを見てください。
なお、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、副題の「こんなに悲しい数字があるんだ」は、中西準子氏の「こんなに悲しいグラフがあるんだ-DDTについて考える-」からのオマージュです。
大人の百日咳の話は、またあとで・・・
追伸:薗部先生・中西先生のお名前を間違えてしまいました。訂正してお詫びいたします(2012/05/30)。
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