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2012年1月 6日 (金)

大人の百日咳ワクチン

 百日咳相変わらず地味に、しかし確実に流行しています。大人の百日咳は症状は一般的には激しくない代わりに、感染力は十分にあります。
 流行は日本だけではありません。世界でもみられるのですが、日本にはいくつか異なる点あります

1. 百日咳のサーベイランス十分ではない

 小児科での定点報告はあります大人のでの報告義務はありません。そのため、どの程度流行しているか、詳細は不明なのです。
 任意の報告システムはネット上であります全例報告ではありません。

http://idsc.nih.go.jp/disease/pertussis/pertu-db.html

2. 昭和50年ごろ生まれの人は、百日咳関連ワクチンを接種していない可能性がある

 昭和50ー52年生まれの方にポリオウイルスの抗体価低いことは知られています。ワクチン自体にも問題ありました接種率も低かったようです。
 同じこと3種混合ワクチンにも当てはまります。接種控起きたことと、接種してもDTワクチンなど百日咳抗原のないワクチン使われていたのです。ちょうどいまの保護者世代になります。

http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cQA012.html

3. 不活化ポリオワクチンと3種混合ワクチンとの混合ワクチン待ちのため、接種控起きている。

 今年の秋には世に出る(かもしれない)、不活化ポリオワクチンと3種混合ワクチンとの混合ワクチン (IPV + DPT ) を待つために現行ワクチンの接種控起きていると聞きます。その間お子さんは免疫ない状態になります。
 以前も書きました、母親由来の百日咳免疫は非常に曖昧です。母親妊娠中に百日咳に掛かり無治療で過ごせば、免疫は確実に得られるかもしれません、母子を危険に晒します。

4. 成人用の百日咳ワクチンない

 世界的日本の3種混合ワクチンはDTaPと呼びます。優れたワクチンです、大人用ではありません。大人に打つと腫れやすいです。海外ではTdapと言って、ジフテリアと百日咳の成分量を減らしたワクチンあります。当初はティーンエイジャー向けでした後述するように適応ってきました。

参考: 百日咳についてその1――こんなに悲しい数字があるんだ

 一方日本ではTdapはありませんし、定期接種の年齢を越えれば役所的には「後は知らないよ」です。日本の小児用3種混合ワクチンを0.2ml (通常は0.5ml)接種すれば副反応も少ないし免疫十分得られるということでNICUなどの一部施設で行われています正式なものではありません。
http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0830010007.pdf
 他にも百日咳診断のむつかしさとか、抗生剤(マクロライド)を安易に使うことでの耐性菌発生の可能性(マイコプラズマ肺炎と同じ)など、課題はいくつかあります。
 アメリカの成人用予防接種スケジュールから、百日咳に関する所を抜き出しておきます。自然に免疫獲得する事のない破傷風についても記載あります。英文も載せておきます。ヘボ訳なので、原文でも確認ください。これを読むと、まだワクチン未接種の成人が海外に長期渡航する場合は、Tdap(一回)→4週間後にTD(ジフテリア・破傷風)→半年後にTDでもいいのかな、とも思います。

 念のため書いておきますが、私は日本でもアメリカと同じスケジュールでワクチンをしろと言っているのではありません。百日咳に関しては大人でもサーベイランスを行い、成人用の百日咳ワクチンを使う必要性を論じる必要があると思うのですが、それがありません。

 三種混合ワクチン定期接種の期間をすぎれば「後は知らないよ」で百日咳が流行しても「注意喚起」だけで終わってしまう行政ではイカンと思うのです。
http://www.cdc.gov/vaccines/recs/schedules/downloads/adult/adult-schedule.pdf

Tetanus, diphtheria, and acellular pertussis (Td/Tdap) vaccination
破傷風・ジフテリア・無細胞百日咳(Td/Tdap)ワクチン接種
Administer a one-time dose of Tdap to adults aged less than 65 years who have not received Tdap previously or for whom vaccine status is unknown to replace one of the 10-year Td boosters, and as soon as feasible to all 1) postpartum women, 2) close contacts of infants younger than age 12 months (e.g., grandparents and child-care providers), and 3) healthcare personnel with direct patient contact.
Tdapを接種したことのない65才未満の成人やワクチン接種歴不明の場合は、十年おきに行うTdブースターの代わりに Tdapを一回接種する。また、以下の場合は  可能な限り早く接種する。1出産後の女性、2.12ヶ月ヶ月未満の乳児と密接に接触する場合(例えば祖父母や保育関係者)、3.直接患者と接する医療福祉関係者など。
Adults aged 65 years and older who have not previously received Tdap and who have close contact with an infant aged less than 12 months also should be vaccinated. Other adults aged 65 years and older may receive Tdap. Tdap can be administered regardless of interval since the most recent tetanus or diphtheria-containing vaccine.
Tdap接種歴なく12ヶ月未満の乳児と密接に接触する65才以上の成人もまた、Tdapを接種すべきである。他の65才以上の成人でもTdapを接種しても良い。直近の破傷風・破傷風含有ワクチンからの接種間隔に関係なく、Tdapを接種できる。

Adults with uncertain or incomplete history of completing a 3-dose primary vaccination series with Td-containing vaccines should begin or complete a primary vaccination series.
破傷風含有ワクチン三回接種による基礎免疫不明または不十分な場合は、基礎免疫を開始または完了するべきである。
For unvaccinated adults, administer the first 2 doses at least 4 weeks apart and the third dose 6–12 months after the second.
未接種成人の場合、最初の二回目は少なくとも四週間隔を開け、三回目は二回目から6ー12ヶ月後に接種する。
If incompletely vaccinated (i.e., less than 3 doses), administer remaining doses.
もし接種、未完了ならば(つまり二回以下)、残りの回数を投与する。
Substitute a one-time dose of Tdap for one of the doses of Td, either in the primary series or for the routine booster, whichever comes first.
基礎免疫や定期的なブースターであれ、どちら先でも、Tdの代わりに一回分Tdapに置き換える

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