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2011年11月 3日 (木)

古くて新しい話題:チメロサール

 ネットサーフィン(死語)をしながら、こう考えた。

 同時接種が危ないというと、数多くなるワクチンが打てなくなる。チメロサールが危ないというと、B型肝炎ワクチンが打てなくなる。人工乳が危ないというと、「完全母乳」しか許容できなくなる。危険と安全との関係は0/1ではないのに、とかくに人の世は住みにくい。

 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、twitterが生れて、facebookが出来る。人の世を作ったものは工作員でもなければ御用学者でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。

 ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば電脳の国へ行くばかりだ。電脳の国は人の世よりもなお住みにくかろう。 (草枕より)

 なんて与太話はさておき、チメロサールのお話しです。

 チメロサールはもう人口に膾炙した感があるのですが、時々「そちらのインフルエンザワクチンは安全ですか」とか「チメロサールは入っていますか」などと問い合わせがあります。改めて、説明したいと思います。

 チメロサールは防腐剤としてワクチンで用いられてきた有機水銀です。有機水銀というと、水俣病を思い出す人がいると思います。こちらで問題になったのは、同じ有機水銀でもメチル水銀で、チメロサールはエチル水銀です。メチルとエチル。似ているようで違います。メチルアルコール(メタノール)は、溶媒として用いられヒトが飲めば失明の危険性がありますが、エチルアルコール(エタノール)は、お酒の成分です。同じような名称でも化学的性質が異なることがあります。

 一時期、ワクチンに含まれているチメロサールが自閉症の原因となるのではないかと言われてきました。発端となった論文があるのですが、その論文はかなり問題のあるものでした。ワクチンと自閉症絡みで裁判を起こしていた団体から、著者がお金をもらっていた(つまり利益相反)だけかと思っていたのですが、捏造もありました。かなり酷いやり口です(くわしくはココで)。日本でも2003年に、TBS報道特集で自閉症と水銀中毒とを結びつけるかのような報道があり、チメロサール悪玉論が蔓延しました。

 結局、チメロサールと自閉症との関連は否定されたものの、疑わしく余計な物は極力入れないようにするという視点から、チメロサールはワクチンから削除または減量されてきました。そうすると「やっぱり危ないんじゃないか」という意見が出るわけです…

 ここで水俣病の原因となったメチル水銀と、チメロサールのエチル水銀の比較を図示してみましょう。

メチル水銀エチル水銀
有害性 水俣病など 過敏症
神経毒性 あり なし?
蓄積 あり なし
生物濃縮(魚) あり なし

 となります。とは言っても、かつてアメリカでは、数多くのワクチンを乳児に接種することで375.0マイクログラムのチメロサールが使われていました。今では原則チメロサールは入っていないようです。

 さて、日本ではチメロサールフリーのインフルエンザワクチンがもてはやされています。それでは、他のワクチンにチメロサールが入っていないのかとおもいきや、実は入っています。

 三種混合ワクチンの一部に入っています。その量は一本あたり、2マイクログラムと4マイクログラム(他の三種混合ワクチンには入っていませんが、一部ホルマリンなどの物質が入っていることがあります)。かなり減量し、チメロサール入のワクチンも少なくなりました。個人的には、よくわからない理由で有効な防腐剤(チメロサール)を削除し、結果ワクチン内の汚染が起きることが不安です。

参考サイト:横浜市衛生研究所「チメロサールとワクチンについて

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