日本は麻疹の輸入国?輸出国?
他の先進国では麻疹はほとんど制圧されているにもかかわらず、日本では度々流行していました。
麻疹ワクチンの接種率が95%以上で麻疹の流行が抑えられるのですが、日本では長年95%を下回っていたため流行を繰り返して来ました。
よく、「日本は麻疹の輸出国」なんて言われて来ました。麻疹に掛かり潜伏期間中に海外渡航した人が、現地で発症するというパターンです。
ひょっとして現地の麻疹ウイルスが残っているのではないか、と思う人もいるかもしれませんが、調べてみると日本固有のウイルスである事がわかりました。麻疹ウイルスの遺伝子を調べてみるとD5という日本固有のタイプだったのです。
その後日本でも積極的に麻疹制圧の動きに転じました(正確には外圧に押された気が・・・)。それならば、どうして愛知県岡崎市や広島県広島市で麻疹が発生したのでしょう?
去年の5月を最後に日本固有のD5は検出されておらず、インドやフィリピンの麻疹ウイルスが検出されているのです。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/measles.html
それでは日本は麻疹は制圧され、「日本は麻疹の輸入国」となったのでしょうか?残念ながら、そうではないとおもいます。
MRワクチン接種率が95%を超える事は無く、特に中高生のMRワクチン(3期・4期)接種率は相変わらず低いままです。何かの拍子に、国内外(片方あるいは両方)の麻疹ウイルスが流行する可能性は十分にあります。そして、また海外に「輸出」する例がでてくるでしょう。
最近、髄膜炎ワクチンシリーズ(ヒブワクチンや小児肺炎球菌ワクチン)を希望する人が増えて来ています。それは喜ばしい事なのですが、DTPやMRワクチンよりも優先する例が目立ちます。
一歳半検診の時に母子手帳をチェックすると、髄膜炎ワクチンシリーズは全て終わっているのに、MRワクチンは未接種という例もあります。
適切な説明が無ければ、MRワクチンは置き去りにされてしまっていたかもしれません。
HIVもそうですが、忘れかけた時こそ気をつける感染症もあるのです。所定の年齢になりましたら、特に理由がない限り早めのMRワクチン接種をお願いします。
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コメント
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Simonです。mixiではお世話になっています。
日本では麻疹の制圧期(Control)は既にすぎ、集団発生予防期(outbreak prevention)から排除期(elimination)に差しかかっていると私は思っています。
麻疹1期の接種率は2008年に比べて2009年は若干接種率が落ちました(94.3%⇒93.6%)が、第2期はむしろ増加しています。(91.8%⇒92.3%)
参考迄に川崎市での麻疹1期の接種率は2009年度でさえ、94.7%を記録しています。
第3期・第4期の接種率の低迷の原因は、2007年度~2008年度に実施された行政措置予防接種の影響が大きいようで、見掛け上の接種率が低下しているそうです。
麻疹排除を示す、人口100万人辺りの患者発生数1名の数字を人口動態にあてはめると127名となります。2010年度の麻疹は全症例457件で、2009年度の736件から大幅に減少しています。
2011年の麻疹発生は4週迄に28例となっています。これから推定すると、今年度371件が推定されます。
上記の統計値をEXCELで統計解析すると、2009年5月頃に0となり、その後増加に転じている結果となっています。
これは、麻疹のタイプ別検出率とよく一致しています。
投稿: Simon | 2011年2月10日 (木) 19時14分