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2010年12月13日 (月)

HPVを不条理に優先する不思議

以前からお話ししていたHPVワクチンのことです。
子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時交付特例金に係る都道府県担当者会議(長い)で、HPVワクチンについての位置付けは以下の通りです。あくまでここの会議での位置付けです。


「勧奨はしないが緊急促進する」


ということです。「勧奨はしないが緊急促進する」とは? ワクチン緊急接種促進(中略)会議 - 感染症診療の原則

日本語的にどう翻訳すればいいのかわありませんが、twitterで、堀成美さんが的確に「翻訳」していました。

翻訳すると「全員に勧めるほどの根拠はないです。でもメーカーが急いで売りたいって言ってるのでよろしく」というニュアンス @takaragi: HPVワクチンを勧奨はしないけど緊急促進するって、わかりずらい。対象となる若者にわかり易く伝えて欲しい。日本語が乱れてるっていうじゃない!

引用元:Twitter

これ以上のことはないでしょう。ここで改めて、HPVワクチンにまつわる不思議ついて、説明したいと思います。

1. HPVワクチンは二つあるのに、事実上一つのみが緊急促進したという不思議。
  

以前お話ししたように、HPVワクチンには二つあります。今日本で流通しているサーバリックスの他にガーダシルがあります。ガーダシルの方が世界的には先に認可されました。それがにほんではサーバリックスが先に認可されました。ガーダシルも当然のことながら申請中ですが、今だに認可されない、ということです。サーバリックス?ガーダシル?: 世田谷区にいる小児科医のブログ

 

世の中には、異なる特徴を持つ似たワクチンがあるのに、事実上一つだけを「緊急促進する」というのはおかしくありませんか?

2. 他にも公費負担すべきワクチンはあるのに、HPVが先行しそうになった不思議。


ワクチンの公費負担で、当初HPVワクチンのみが対象になりました。
世田谷区のHPVワクチン公費負担?ちょっと待て!: 世田谷区にいる小児科医のブログ
HPVと子宮頸部がんの関連は確かにありますが、他のワクチンに先行して公費負担をする理由はありません。

従来は、例えば細菌性髄膜炎を予防するヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンは、私たちが定期接種化を要望しても「有効性・安全性を確認してから」との条 件を突きつけられてきた。そしてその有効性・安全性の確認は、完全なる任意接種下で実施されてきた。接種費用は費用助成をする地方自治体はあるものの基本 的には全額保護者負担であり、啓発も患者会やメーカー、医療従事者の自発的な取り組みに委ねられてきた。要は国は殆ど一切について関与せず、民の負担で勝 手にやってください、データがそろいコンセンサスが得られたら定期接種化しますよというスタンスだったのだ。今回の「子宮頸がん予防対策強化事業」は任意 接種費用も国が助成する、啓発も健康被害対応も国がお金を出すと、従来のプロセスを180度転換する内容だ。

引用元:Vol. 276 子宮頸がん予防対策強化事業の正当性は、ヒブ・肺炎球菌ワクチンの即時定期接種化が無ければ否定される - MRIC by 医療ガバナンス学会

  

その後様々な方の尽力があり、HIbワクチンや小児肺炎球菌ワクチンも公費負担の対象となりましたが、疑念は残ります。

今回の補正予算での緊急促進ワクチンの事業。怒りや危機感をおぼえた小児科のドクターや、守る会の親御さんたちが動かなかったら、子宮ネタ単独系の人達によってHPVワクチンだけの予算でおわってしまってたのでは?。メディアはそういったことも日本の予防接種の現状として書いてほしい。

引用元:Twitter

 

確かに巷で「子宮頸部がんワクチン」と言われているHPVワクチンは効果はあります。しかし、子宮頸部がんはワクチンだけで全て防ぎ得るものではありません。子宮頸部がんの検診のみならず、コンドームを使うようにとか前後にシャワーで洗うようにとか、性交渉のパートナーは特定するとか、そのような配慮も必要になってくるでしょう。しかしそういった話は抜きに、日本でのHPVワクチンは事実上一種類のみという現状で特定の会社のワクチンのみ公費負担、緊急促進という話が先行してしまいました。恥ずべき話です。

「HPVワクチンをすると不妊になる」なんてレベルの低いもっと恥ずべき話はまた今度。

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コメント

参議院議員の山谷えり子さんからご返事を頂きました。

予防ワクチンに関しては、子供に接種すること、副作用や効果の持続性について

疑問をいだき、質問主意書を提出しましたが、納得いく回答は得られておりません。

御参考までに質問主意書と政府答弁の一問一答をお送りさせていただきますので

ご高覧ください。との事です。

その後製薬会社グラクソ・スミスクライン社と4回にわたってやりとりしたそうです。
会社側の回答は・・・・・・・・・・・・・・。

山谷えり子 質問主意書(一問一答式)
第175回 臨時国会(平成22年7月30日~8月6日)
・子宮頸がんワクチン接種に関する質問主意書
(内閣参質175第35号)
(平成22年8月6日提出、政府答弁書8月20日)

子宮頸がんは遺伝などに関係なく、近年では二十代後半から三十代の若い女性の発症率が増加しているといわれている。
 この子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染であるとされている。近年この子宮頸がんの発症の原因であるHPVの予防ワクチン(以下単に「ワクチン」という。)が開発され、昨年十月に厚生労働省はその販売を承認し、十二月二十二日より一般の医療機関でそれを接種することができるようになった。
 国立がん研究センターがん対策情報センターによると、子宮頸がんのリスク要因として、低年齢での初交、性的パートナーが多い、多産、他の性行為感染症が報告されている。
 HPVは百種類以上もあり、このうち約十五種類が子宮頸がんになるハイリスクタイプといわれる。厚生労働省が承認した英グラクソ・スミスクライン社のワクチン「サーバリックス」は、子宮頸がんの原因ウイルスHPV十六型と十八型の二種類の感染を予防するとされる。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 我が国における子宮頸がんによる年間の死亡者数を示されたい。

  (政府答弁)
   一について
    平成二十年人口動態統計によると、同年の子宮頸がんによる死亡者数は、二千四百八十六人である。

二 我が国において新たに子宮頸がんと診断された年間の罹患者数を示されたい。また、早期発見で切除すれば、それ以上の進行や転移を防げることが多く、生命保険約款でも対象外となっている場合もある上皮内がんとそれ以外の内訳も示されたい。

  (政府答弁)
   二について
    お尋ねの罹患者数は、各都道府県からの最新の報告を基に推計すると、平成十七年において、上皮内がんを含む罹患者数が一万六千四百二十二人であり、上皮内がんを含まない罹患者数が八千四百七十四人である。

三 HPVに感染した場合に、子宮頸がんに発展する割合を示されたい。

(政府答弁)
   三について
    ヒトパピローマウイルス(以下「HPV」という。)の感染者数を把握しておらず、お尋ねの割合についてお答えすることは困難である。

四 何故、近年二十代後半から三十代の若い女性の子宮頸がん発症率が増加しているのか、政府の見解を示されたい。

  (政府答弁)
   四について
    お尋ねについては、性交渉開始時期の低年齢化等の影響があるものと考えている。

五 承認間もないワクチンの長期的な効果及びその副作用についてどのように考えているか。また、ワクチンへの公費助成の検討もされている中で、その費用対効果についての見解を示されたい。さらに、ワクチン接種後の経年チェックについての対応をどのように考えているのか示されたい。

  (政府答弁)
   五について
    平成二十一年十月十六日にHPV十六型及び十八型感染に起因する子宮頸がん(扁平上皮細胞がん及び腺がん)及びその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)二及び三)の予防について承認されたサーバリックスの長期的な効果に関しては、海外の十五歳から二十五歳までの七百七十六例を対象とした試験結果によると、平均追跡期間五・九年の時点では、その予防効果は最長六・四年間持続することが確認されているものの、その予防効果の持続期間については確立していない。
    一方、サーバリックスの副反応については、注射部位の疼痛、発赤等のほか、全身性の症状として、疲労、筋痛、頭痛、胃腸症状(嘔吐、下痢等)、関節痛、発疹、発熱等があり、まれに、ショック、アナフィラキシー様症状等があるものと承知している。
    また、我が国におけるサーバリックスの費用対効果については、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート(平成二十二年七月七日版)」(平成二十二年七月七日厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会資料)によると、サーバリックスによる免疫維持期間が明らかでないこと、すべての子宮頸がん患者に占めるサーバリックスが感染予防効果を有するHPV十六型及び十八型が検出される子宮頸がん患者の割合が五十パーセントから七十パーセントまでと幅があることから、現時点で正確な評価は難しいとされている。
    お尋ねのサーバリックス接種後の経年的な影響の把握については、製造販売業者であるグラクソ・スミスクライン株式会社において、承認申請前に実施した国内の二十歳から二十五歳までの千四十例を対象とした試験に参加した被験者に対し、有効性及び安全性の長期追跡調査を製造販売後においても実施するとともに、千例について延べ三千回接種後の安全性に関する調査を実施することとしている。


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