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2010年11月24日 (水)

WHOの自殺事例報道に関するガイドラインについて

 iPadでこの文章を書いています(と思ったら詳しいことはできないので、パソコンで修正します)。ぼちぼち書きましょう。

 子どもたちの自殺が報道されると、ニュースになります。こういった書き方をしたのは、その陰ではるかに多い数の大人が自らの命を断っています。それでは、子どもたちの自殺がどうしてニュースになるのでしょう?

 マスコミからはいろいろ意見はあると思いますが、子ども絡みのことは絵になるからでしょう。みんなの関心を引き寄せます。しかも、どんな形であれ学校絡みであれば学校を叩きます。学校をいくら叩いても、マスコミに塁が及ぶ事はないからです。

 ところで報道することで、子どもの自殺が減るのでしょうか?残念ながらそうではなさそうです。一度大きく報道されると、新たな自殺者が出ます。自殺が自殺を呼ぶのはなく、自殺報道が自殺を呼ぶのでしょう。一部のマスコミはそれを承知で報道するのでしょうね。これをゲーテの書いた「若きウェルテルの悩み」に因んで「ウェルテル効果」と言うのだそうです。

 これは世界的にも問題になり、WHOも自殺報道に関するガイドラインを出しました。日本語訳が、日本小児科学会の中にあります。

http://www.jpeds.or.jp/pdf/who_guideline.pdf

一般的な自殺をどのように報道するか

自殺を報道する際に対処すべき具体的な問題は以下の通りである。

  • 統計は慎重に正しく解釈する。
  • 確実で信頼できる情報を用いる。
  • 時間の制約があったとしても、場当たり的なコメントは慎重に取り扱う。
  • 小さな象徴に基づいた一般化には特別な配慮を必要とする。 「自殺の流行」や「世界で最も自殺率の高い地域」といった表現は避ける。
  • 社会や文化の変化や退廃に対する理解しうる反応として自殺行動を報道してはならない。

特殊な自殺をどのように報道するか

次の点を心にとどめておくべきである。

  • 特に有名人が関係している場合は、センセーショナルな報道は徹底して避けるべきである。記事は可能な限り小さくすること。その有名人が持っていたかもしれない、あらゆる精神衛生上の問題を認めねばならない。誇張を避けるために、あらゆる努力を払うこと。故人や、自殺の方法、自殺の光景の写真は公表しない。第一面のヘッドラインは、自殺報道のための絶好の位置では決してない。
  • 自殺の方法や、それをどのように調達したかの詳細な記載は避ける。自殺のメディア報道は、自殺の頻度よりも、どのような方法を用いるかにより大きなインパクトを与えることが研究によって示されている。特定の場所(橋、断崖、高層ビル、線路など)は自殺と従来から関連があり、それらが知れ渡ることでより多くの人々がそれによって自殺するリスクを増大させる。
  • 説明がつかないような、あるいは単純化した形で自殺を報道しない。自殺は決して 1つの要因や出来事によるのではない。 自殺は通常、 精神的・身体的な疾患、 薬物乱用、家庭不和、対人関係の衝突、ライフストレスなどの多くの要因の複雑な相互作用によって起きる。さまざまな要因が自殺に寄与していると認めることが有用である。
  • 破産、試験の不合格、性的虐待などの個人的な問題に対処する方法として自殺を描き出さない。
  • 不名誉や心理的苦痛の両方の点で、家族や他の遺族への自殺の影響を考慮しなければならない。
  • 殉教者として自殺を美化したり、おおやけに賛美したりすることは、社会が自殺行動を尊重していると受け取られかねない。代わりに、人の死を嘆くということに重点を置くべきである。
  • 未遂に終わった自殺企図の身体的な結果(脳損傷、麻痺など)を説明することは、抑止力として働くかもしれない。

利用可能な援助に関する情報の提供 

メディアは、自殺についてのニュースと一緒に以下の情報を発表することで、自殺防止に積極的な役割を果たせる。

  • 利用可能なメンタルヘルス・サービスと命の電話の最新の電話番号とアドレスをリストする。
  • 自殺行動の警告サインを公表する。
  • うつ病はしばしば自殺行動と関連すること、それは治療可能な病気であることを伝える。
  • 悲嘆に暮れる生存者に共感のメッセージを伝え、利用可能ならば、支援団体の電話番号を提供する。これは自殺の危機の際に、メンタルヘルスの専門家、友人、家族による介入の可能性を高める。

何をするか、何をしてはならないかのまとめ

何をするか

  • 事実を示す際には、保健機関と緊密に協力する。
  • 自殺を「成功した(successful) 」ではなく「既遂(completed) 」と表現する。
  • 適切なデータのみを中面で示す。
  • 自殺に代わる方法を強調する。
  • 命の電話や地域の援助に関する情報を提供する。
  • リスクを示す指標と警告サインを公表する。

何をしてはならないか

  • 写真や遺書を公表しない。
  • 自殺の方法について詳細に報道しない
  • 原因を単純化しない。
  • 自殺を美化したり、センセーショナルに報じない。
  • 宗教的・文化的な固定観念を用いない。
  • 非難をしない。

  これをご覧になれば、日本の多くのマスコミがWHOのガイドラインから外れた報道をしているかがわかります。報道は慎重にしてもらいたいものです。

 

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