VAPPの正確な頻度・OPVのサーベイランスはできるのか?
ポリオの件でコメントをいただきました。
https://setagaya-syouni.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-2091.html#comments
いつも参考にさせていただいています。
私も一刻も早く国内でのIPV接種が可能になることを望んでいます。今後もいろんな情報を期待しています。
今回はポリオ患者の方からのメールの転載ということですが、気になることがひとつあります。(的外れな意見であればご容赦ください)参考4)で
「なお、国立感染症研究所は、最近は、200万接種に1回と公称しています。(2回接種なので、患者側からみると、100万人に1人ということになります)」
とありますが、単純に2で割って、100万人に1人としていいのでしょうか。"本邦では1971年~2000年の間に33例、年間約1人の割合で発症しており、接種者および接触者を含めた発症率は200万当たり1人発症していま す。接種者のみでは370万当たり1人、初回投与のみでは230万当たり1人と初回投与の方がVAPPの発症頻度は高いです3)。"
http://www.pariet.jp/helpful/vol55/no571/sp21.html"ポリオ関連麻痺の発生率について、Hao L, Toyokawa S, Kobayashi Y: Poisson-model of risk of vaccine-associated paralytic poliomyelitis in Japan between 1971 and 2000. Jpn. J. Infect. Dis,61:100-103,2008 では、「接種者のVAPP 1/370 万接種、接触者のVAPP は1/440 万接種、合計1/200万接種」としている"
日本小児科学会予防接種感染対策委員会 声明
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_100820.pdf参照している論文は両方とも同じもののようです。
どちらにしろ、添付文書の約486万接種当たり1人は信用できない数字に見えますが。
たまたまルーマニアの文献(生ポリオワクチンをした後筋肉注射を頻回にすると麻痺になる)をあたっていて、yamaさんと同じサイトを見ていました。
http://www.pariet.jp/helpful/vol55/no571/sp21.html
原典もあたってみました。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM199502233320804
日本でポリオ接種をした後、筋注をする期会というのはあまりないのですが、あえていうならシナジスの時でしょう。しかし、ここの論文を読んでみると、麻痺を起こしたケースは10回以上が多く、平均は16.8回ということです。日本でここまで筋注をするケースはないでしょう。日本では、ポリオワクチンの効能書きに書かれている、
- 本剤の接種後およそ1か月間は、頻回の筋肉注射(抗生物質等)を行うと、ワクチン関連麻痺例の出現頻度が高くなるという報告があるので13)、筋肉注射は控えるのが望ましい。この報告によると、原因は筋肉注射を行う薬剤にあるのではなく、筋肉注射という強い刺激と、ワクチンウイルスの中枢神経への進入の関連を推測している。
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/631340JA1028_1_06/
は、ほぼ無視してかまわないでしょう。しかし、ポリオワクチンならばIPVの方がベターです。IPVにした方がいいかもしれませんね(シナジスとの同時接種はできるかな?)。
話は戻しますがVAPPの頻度です。答えとしては、100万回につき一回よりかは多いかもしれないけれど正確にはわからない、ということでしょうか?
というのは、多くの国々で不活化ポリオワクチン(IPV)に切り替わっているので、生ポリオワクチン(OPV)のデータを新たにとることができないのです。現在OPVを使っている多くの国は、いわゆる後進国といわれているところで、十分なサーベイランスができないのでしょう(日本は・・・)。OPVと筋肉注射の関係も、これ以上のものは出てこないと思います。
特に日本では、VAPPを疑う小児科医が少なく便の検査をしないので(サーベーランスが十分ではない)、頻度を低く見積もられている可能性はあります。しかし、正確なデータを出すのは難しいでしょう。
これくらいのことしかかけなくごめんなさい。他の方で、ご意見はないでしょうか?
« 昨日のツタヤの読み聞かせ | トップページ | OPVの真実:WHOの報告・麻痺数も心配だけどアウトブレイクも心配!! »
「ワクチン」カテゴリの記事
- 大人の百日咳ワクチン(2012.01.06)
- 年頭の挨拶:真のワクチン元年になるのはいつ?再び(2012.01.06)
- 古くて新しい話題:チメロサール(2011.11.03)
- Fukushimaの冷蔵庫(2011.07.16)
- B型肝炎ワクチンについて(2011.06.19)
「ポリオ」カテゴリの記事
- 【注意喚起】アジアでポリオが流行するおそれ:未接種が一番危険(2011.09.21)
- 調布市の方へ:生ポリオワクチンは少なくとも来年の春までは続きます(2011.09.20)
- 不活化ポリオワクチンは違法行為?逆の発送(2011.07.01)
- 今週の「もやしもん」/ポリオワクチン・様子をみるのは冒険。(2011.06.29)
- 国産のセービン株不活化ワクチンは、ポリオ根絶の夢をみるか?(2011.06.05)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« 昨日のツタヤの読み聞かせ | トップページ | OPVの真実:WHOの報告・麻痺数も心配だけどアウトブレイクも心配!! »
ワクチンの安全性の数値として、接種回数あたりというのが、日本の医学の常識かもしれません。
しかし、被害者側からみれば、100万人の新生児の抗体を得るのに、何人の犠牲が出るかという見方もあると思います。実際、資料6)のWHOのレポートも、新生児100万人あたり、2−4名という数字を出しています。
繰り返し、小児科医の皆さんにお願いします。
地元で、ポリオワクチンの集団接種があったら、1ヶ月間は、発熱後の麻痺や死亡の場合、ポリオも疑って検査をお願い申し上げます。
投稿: ポリオ患者です。 | 2010年9月14日 (火) 04時48分