喘息の治療法。気管支拡張薬(β刺激薬その1)
まずは、喘息の治療法で気管支拡張薬からはじめてみます。
気管支拡張薬は大きく分けて
- β刺激薬
- キサンチン製剤
- 抗コリン薬
に分かれます。小児では抗コリン薬はほとんど使われることはありません。
β刺激薬につてお話します。
人間の体にあるいろいろな細胞には、種々の薬に反応する受容体というものがあります。その中にβ受容体とい うものがあります。β受容体にも種類があり、気管支の平滑筋にあるβ2受容体というものには、気管支を広げる作用があるのです。β刺激薬というものは、その受容体を刺激するものです。
作用時間により、長期間型LABA(ラバ)・短期間型SABA(サバ)とに分かれます。長いほうがLong、短いほうがShortと思えればいいでしょう(実際そうです)。原則として予防薬としてのコントローラーにはLABAを、発作が起きたときのリリーバーには同じく原則としてSABAを用います。
- LABA:ホクナリン(一般名ツロブテロール)、スピロペント(クレンブテロール)、セレベント(サルメテロール)、アトック(ホルモテロール)など
- SABA:メプチン(プロカテロール)、ベネトリン・サルタノール(サルブタモール)、ベロテック(フェノテロール)など
それと、剤形にも種類があり、
- 吸入
- 内服
- 貼布(ホクナリンテープなど)
があります。それぞれに使い分けが必要です。SABAの吸入は即効性がありますが、比較的短時間で切れてしまいます。LABAは即効性はありませんが、穏やかに効きます。
注意する点としては、β刺激薬の副反応です。β2刺激薬というのがあれば、β1刺激薬というのもあります。純粋なβ1刺激薬というのもなければ純 粋なβ2刺激薬というのもありません。比較的β2刺激の作用が強い薬が喘息治療に用いられています。β1刺激薬の副反応としては動機などがあります。ほかのβ刺 激薬としての副反応は、振戦(手が震える)などがあります。こういった副反応は小児では少ないです。よく年長女児で、ホクナリンテープを貼ったら手が震えてどきどきしたということもあります。また、メプチン吸入液を一気飲み(!)したお子さんの心臓は、どきどきしていました(数時間で治まりましたが)。
β2刺激薬自体は抗炎症作用はなく、気道過敏性も抑制しません。ですので、薬の作用が切れ気道刺激があると、また喘息の発作を繰りかえりま す。このときにβ2刺激薬のみに頼っていると、気道がβ刺激薬に耐性(タキフィラキシー)を起こし、β2刺激薬を使用しても効果がなくなってしまうという 可能性があります。一昔前、喘息死(あるいは発作)で運ばれてきた患者さんの中には、SABAの吸入スプレーを握り締めたままの人もいました。
以前書いた
喘息にLABAは安全か?NEJMの論文から https://setagaya-syouni.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-e896.html
もご覧ください。
断っておきますが、β2刺激薬が危険なのではなく、使い方が問題なのです。喘息を頻回に起こす人はまずは、予防(コントローラーを含む)をしっかりすること。発作が起きれば適切な量のSABAを使用すること。短期間で再発するあるいは効果がない場合は、速やかに医療機関を受診する(あるいは必要な処置を行う)、ということが必要だと思います。
ホクナリンテープとベロテックはまた改めて書くことにします。
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