喘息の治療(ホクナリンテープ) 多芸は無芸?
今回はホクナリンテープです。
ホクナリンテープとは、医療機関で「子供の咳がひどいです」というとたいていのところでくれる四角いテープです。ホクナリン(一般名ツロブテロール)というβ-刺激剤系の気管支拡張薬を、貼布剤にしたものです。寝る前に体に張れば、体に穏やかに吸収され効果が持続するという触れ込みです。
発売後、爆発的に処方されました。咳といえばホクナリンという感じですね。保護者からも求められることもありました。本来は一日たったら張り替えるのにそのままにしていて、勲章のようになっているお子さんもいました。
しかしながらホクナリンの薬理作用を考えれば、すべての咳にホクナリンが有効であるわけがありません。本来は、気管支喘息・咳喘息に使うべきものでしょう。「急性気管支炎」に適応という効能書きがありますが、薬理作用上効くか疑問です。また、長引く咳で鑑別が必要な、副鼻腔炎による後鼻漏、百日咳、胃食道逆流には、効果はありません。
こちらも見てください。認可されたときの論文内容を読んで、驚きました。
「咳止めのテープ」の問題点 http://www009.upp.so-net.ne.jp/tatsuo/tape.htm
ただ貼るだけで便利なので、効果がわからないままに使われすぎてしまっている、「多芸は無芸」というイメージがホクナリンテープにはあります。ただ、適応を限って使えばいい薬のはずです。夜間から早朝の発作が激しい喘息には効果があると思います(mornig dip)。
ホクナリンテープには何種類かのジェネリック(いわゆるゾロ)が存在します。同じ性能で安ければジェネリックのほうがいいのではという意見もありますが、一般的に外用剤のジェネリックには注意が必要です。ホクナリンテープのジェネリックでは、
- 粘着力に問題がある(はがれやすい)
- 薬剤が長続きしない(すぐになくなる)
という問題があります。ホクナリン自体の特許はもう切れましたが、ホクナリンを徐放する(ゆっくりと作用させる)特許は、結晶レジボアシステムといって、まだホクナリンテープの製造会社持っています。そのため、ジェネリックの会社はそのシステムを利用することができません。
ジェネリックによっては、貼ってから3時間ですべて吸収されてしまうものもあります。つまり、貼ってから3時間たてばただのテープになります。これではmornig dipに対応できるわけがありません。
ちなみに、海外ではホクナリンテープというものがありません。気管支拡張の貼布剤自体ないのです。ですので外国に入ってホクナリンテープの話をしても、外国のお医者さんは混乱すると思います。
次回は、悲劇の薬ベロテックの予定です。
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