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2010年9月 8日 (水)

アシネトバクター・NDM-1報道について思う

神戸大学の岩田健太郎教授のブログからです。

悪質な報道許さぬ態度を (べつに処分はいらないが) http://georgebest1969.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-462d.html

今度出すワクチンの本の一部をここに紹介する。

「(略)
 後述する京都・島根のジフテリア事件、1948年 に起きたジフテリアのトキソイドによる死亡者が多発した事件で、同年11月10日の朝日新聞は「責任の追及は第一である」と報じています。問題の原因究明 よりも責任の追及を第一義的な目標にしてしまっている。これは「かわいそうなワクチン副作用の被害者にかわって俺たちが悪い奴らを(どこかに設定して)懲 らしめてやる」という話法です。(略)ただ、悪者を見つけてこらしめて、溜飲を下げるという安っぽい時代劇のような鼻息の荒さだけがそこにある」

 昨日、朝日の記者さんとお話をしていて、1948年の朝日の報道の話をした。「戦後間もないマスメディアはこのくらい幼稚でした。何かあると原因 究明や実態の把握の前にとりあえず加害者を捜して攻撃する、という幼稚な英雄気取りです。それに比べれば今のメディアはまだましかもしれませんね」

残念なことに、僕の見込みは甘かった。マスメディアは昭和20年代から少しも成長していない。

 岩田先生は、朝日新聞の今日の社説を読んでどう思われるかわかりませんが、比較的バランスの取れた書き方かなと思います。多少突っ込みしたいところもありますが、「合理的な投資で若い命を守れる策がある。最優先の課題だろう。」には大いに共感いたします。

 世田谷区内の病院でも多剤耐性アシネトバクターが見つかったということですが、何か問題が起これば医療側だけを悪者にして叩けばそれだけ医療が良くなるのだ・・・そういった思考・敵討ち的な報道とは早くおさらばしてもらいたいものです。(朝日新聞がホメオパシーを問題にしているのは、一部のホメオパシーが故意に医療から遠ざけさせたことだと思います。院内感染を故意に蔓延させたい医療機関があればこれは責められるべきです)。

 少なくとも、「我々には麻疹で何人亡くなるかということは関係ない、むしろそのワクチンで何人亡くなるかということの方が問題だ」からは大きな前進でしょう(注意:このコメントが朝日新聞記者かどうかはわかりません)。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2

子宮頸がん―すべての女性に予防策を

 厚生労働省は、子宮頸(けい)がんの予防に国として取り組む方針を打ち出した。来年度予算の概算要求にそのための150億円が盛り込まれた。

 大いに歓迎したい。

 子宮頸がんは毎年、日本全国で1万5千人、とりわけ20~30代の若い女性が発症し、約3500人が命を落としている。助かっても子宮を摘出して子どもを産めなくなるなど、身体的にも精神的にも負担は大きい。

 ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因とわかり、ワクチンもできた。6~7割予防できるとされ、日本でも昨秋承認された。今や、予防できるがんなのである。

 試算によれば、12歳の女児全員への接種に210億円かかる一方、将来の医療費など190億円の節減につながる。働き盛りを失う損失も防げる。社会全体が得る経済的な効果も大きい。

 しかし、任意接種で5万円前後の費用がかかる。普及は進んでいない。

 小学校での集団接種を始めた栃木県大田原市など、費用を全額公費で負担したり、一部を助成したりしている自治体はまだ全体の1割以下だ。

 厚労省の計画では、中1~高1の女子を接種対象にし、市町村に費用の3分の1を補助する。

 だが、最近の自治体の厳しい財政を考えれば、残る3分の2の費用の負担が重く、一斉接種を始められない市町村も多そうだ。

 多くの命にかかわる病気なのに、このままでは、地域によって予防の格差ができてしまう。

 先進諸国には公費負担制度が多い。英国、イタリア、オーストラリア、マレーシアといった国々や米国の一部の州は全額が公費負担だ。フランスのように医療保険で大半がカバーされる国もある。12歳前後の1、2年を優先接種の対象にして一斉に行われている。

 こうした国々では、併せて、がんを早期に見つける検診にも力を入れている。ワクチン接種とうまく組みあわせれば、9割以上防ぐことも可能で、ほぼ根絶できるといっていい。

 日本でも、同様の進め方が必要だろう。やはり公費負担で、たとえば中1を優先年齢としてワクチンを接種し、20歳以上では必ず検診を受けるようにする。長期的な視点で効果の追跡もできるようにすることが大切だ。

 日本では、予防接種法に基づく公費による定期接種のワクチンは日本脳炎やジフテリアなど8種にとどまり、先進国の水準からみると極めて少ない。

 インフルエンザ菌b型(ヒブ)と肺炎球菌のワクチンは、世界中で小児の命を救っている。日本でもやっと承認されたものの、任意接種のために高い費用が普及の壁になっている。

 合理的な投資で若い命を守れる策がある。最優先の課題だろう。

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