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2010年4月 8日 (木)

日本脳炎ワクチンについて考えてみる

日本脳炎ワクチンに関する年表です。(参照wikipedia)

 日本脳炎やADEMに関しては、こちらもご覧ください。
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/JEVMeeting.htm
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/WhatADEM.htm

 少しまとめてみます。

  1. もともと日本には日本脳炎が多かった。
  2. 日本脳炎ワクチンにより、日本脳炎の発症数は激減した。
  3. その結果、ワクチンの副反応が問題になり始めた。
  4. 日本脳炎ワクチンによる重篤な副反応と思われる事例があった。
  5. 日本脳炎「積極的勧奨の差し控え」という通知
  6. 日本脳炎の報告が増加
  7. 1期の推奨的接種の復活

 疑問が三つあります。一つは、日本脳炎ワクチンでADEMが起こったのか。もう一つは、「推奨的接種の差し控え」という通知は妥当だったのか。もう一つは、今まで「推奨的接種の差し控え」で接種できなかった世代に、何かしらの保障はあるのかということです。

1.日本脳炎ワクチンでADEMが起こったのか

 旧来の日本脳炎ワクチンは、マウスに日本脳炎を感染させ、その脳から作ったものです(マウス脳)。そのマウス脳からADEMが起こったといわれています。

 しかし、日本のワクチンは概して品質は良いです。日本脳炎ワクチンに含まれていたマウス脳の成分は、検出値以下です。これで、ADEMが起こると説明するのは難しいです。さらに昔のよりマウス脳が残っていたワクチンで、ADEMがより頻発していたというと、そうではありません。

 では、マウス脳を使わないワクチン(日本脳炎ワクチン以外でも)でADEMは起こらないかというと、そうではありません。特発性ADEM(原因不明)とワクチン接種時期が重なるという紛れ込みも知れませんが、それを証明することは難しいです。

 いかに優れたワクチンでもADEMなどの副反応を完全に否定することは、残念ながら出来ません。新型日本脳炎ワクチンであるジェービックVだからADEMはおきないということではありません。

2.「積極的勧奨の差し控え」という通知は妥当だったのか

  「積極的勧奨の差し控え」を読んで、すぐに理解できた人は何人いるでしょうか?

 禁忌でも中止でもない、かといって接種したほうが言いという文言も無い。でも日本脳炎になるリスクはあるから、外に出るときには長袖長ズボンをはいたほうがいい(日本脳炎は、ある種の蚊で感染するため)。

 これを書いた官僚は、自分の子供に真夏でも長袖長ズボンで外に出していたのでしょうか?日本脳炎ワクチンを接種しない代わりに長袖長ズボンを指導した接種医が、何人いるでしょう?想像しただけでも、この通知がおかしいことがわかります。

 本来であれば、「積極的勧奨の差し控え」という通知は出すべきではありませんでした。

3.今まで「推奨的接種の差し控え」で接種できなかった世代に、何かしらの保障はあるのか

 これに対しては、期待するしかないです。ただ、今のところ供給量が少ないのが気になります。

 行政やメーカーそれに小児科医が、子供達の安全を考えているのか、自らの保身を考えているのか、試されています。

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