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2010年4月17日 (土)

百日咳についてその1――こんなに悲しい数字があるんだ

 通常生後3ヶ月になってから打つワクチンのひとつに、DPTというのがあります。最初から、ジフテリア(diphtheria)・百日咳(pertussis)・破傷風(tetanus)の英語での頭文字からとったものです。海外では、DTPとも表現され、百日咳の成分が全細胞(whole)の場合はDTwPで、後述する無細胞または非細胞(acellular)の場合はDTaPと区別しています。もともとDPTワクチンはDTwPワクチンだけでしたので、日本でもこのワクチンで接種が行われていました。

 しかし、1974年にDPTワクチンで2名の死亡事故が発生し、ほかにも有害事象が報告されました。マスコミなどによる反ワクチンキャンペーンが始まりました。1975年にはDPTのワクチンは中止になりました。3ヶ月後接種年齢は比較的安全とされる2歳以上から再開されましたが、接種率は低いままでした。

 ただ、百日咳菌が根絶されたわけではないので、結果として多くの赤ちゃんやこども達が感染することとなりました。典型的な百日咳以外は診断するのは難しく統計により幅がありますが、感染者は1万人から3万人ともいわれ、死亡者数は20から113人とも言われています。1981年から改良されたDTaPワクチンとなりました。

 もちろん、ワクチンの副反応(有害事象)による被害者数と、ワクチンをしなかったことによる被害者数とは、簡単に比べられるものではありません。しかし当時のマスコミは、ワクチンによる死亡と、それをしなかったことによる死亡の扱いはあまりにも違いすぎました。

 これは、麻疹についてのマスコミの発言です。

我々には麻疹で何人亡くなるかということは関係ない、むしろそのワクチンで何人亡くなるかということの方が問題だ

 私などは、これを初めて読んだときに血圧が上がりましたが、日赤医療センターの薗部先生は違いました。詳しくは、こちらを見てください。

 なお、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、副題の「こんなに悲しい数字があるんだ」は、中西準子氏の「こんなに悲しいグラフがあるんだ-DDTについて考える-」からのオマージュです。

 大人の百日咳の話は、またあとで・・・

 

追伸:薗部先生・中西先生のお名前を間違えてしまいました。訂正してお詫びいたします(2012/05/30)。

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