感染症

2010年5月16日 (日)

ポリオワクチン

 先日仕事のためアメリカに一家で住むことになるということで、ワクチン相談を電話でした方がいました。アメリカでは、必要なワクチンをしていない場合は小学校に入学できないということもあるのです。

 日本とアメリカのワクチンには埋めがたい溝があるのですが、特に問題になるのが、ポリオとBCGです。BCGをするとツベルクリン反応が陽性となるのですが、BCGをしないアメリカでは「ツベルクリン陽性=結核菌陽性」であり、本当の結核でなくても、レントゲン写真や場合によっては結核のお薬を長期間(確か9ヶ月!)内服することが求められます。結核とBCGについては、また改めて書こうかと思います。

 ポリオは生ワクチン(OPV)であれば3回以上。不活化ワクチン(IPV)とOPVの組み合わせであれば、4回以上するのが通常です。実際はOPV単独でも4回接種を勧める人もいます。国によっては10回以上ポリオワクチンをするところもあるようです。

 以前「ポリオどうしますか?」で書いたように、副反応の多いOPVを先進国で行っているのは、日本だけです(逆に言えば、ワクチンに関しては日本は後進国ともいえます)。IPVへの導入が叫ばれていますが、「遅々として進まず」です。ポリオの会でも嘆いています。

不活化ワクチン製造は2年後には、3年後には、いま準備中・・・と何年言い続けられたでしょうか。アメリカが完全に不活化に切り替えた10年前、せめて1年前、不活化に切りかえられていたら、ポリオを発症せずにすんでいた子どもたちが何人もいます。そして、生ワクチンを使い続ける限り、ポリオを流行させ続けるのです。ウイルスの垂れ流しで世界中を危険にさらすと言ったら大げさと思われるでしょうか。しかし、生ワクチンのウイルスの強毒化で、各地で何度もポリオ流行が起きています。二次感染、三次感染の危険性がなおざりにされています。http://www5b.biglobe.ne.jp/~polio/

 何で、早く不活化ワクチンを導入しないのでしょう?厚労省は、子どもに目を向けているのでしょうか?それとも天下り先?

 個人的には、もしIPVの供給量が足りないということであれば、IPVを二回した後にOPVを二回する方法がいいと思います。アメリカでも通用する方法です。そして何より、ごくまれに起こるOPVによるVAPP(ワクチン関連ポリオ麻痺)を防ぐことができます。

 勿論、最終的にはOPVを廃止して、IPVをほかのワクチンと混合するのがいいと思います。

 私の方法(IPV+OPV)はともかく、ポリオの会に賛同される方は、是非とも署名をお願いします。

http://www5b.biglobe.ne.jp/%7Epolio/2010polio.pdf

2010年5月14日 (金)

B型肝炎訴訟

本日のニュースです。

B型肝炎訴訟 国、和解協議入りを正式表明 札幌地裁 http://www.asahi.com/health/news/TKY201005140181.html

 集団予防接種の注射器の使い回しなどが原因でB型肝炎ウイルスに感染したとして、・・・・

 これをみて、皆さん今のB型肝炎の患者さんは、ほとんどが予防接種のまわしうちによってうつったのでは、と思うかもしれません。

 ところが必ずしもそうではありません。

 B型肝炎とは、血液によって感染しますが、大きく分けて二つの経路があります。ひとつは、母親から生まれる際に感染する「垂直感染(母子感染)」。もうひとつが、血液・体液を介して感染する「水平感染」です。

 垂直感染では、新生児の感染対策が施されて激減しました(0ではありません)。水平感染は今も続いています。

 以前診た慢性B型肝炎の患者さんは、感染経路がわからないということでした。母子感染でもないし、年齢から言っても予防接種が原因ではありません。そういえば、ゲームセンターのトイレに無造作に捨ててあった(!)注射器の針を触れてしまったから、肝炎やHIVの検査をしてほしいという人もいました。麻薬の回し打ちが横行している地域でした。

 原告団が「一律救済」を求める気持ちはよくわかります。感染したのはその人の責任ではありませんし、いやな言葉ですが線引きされることで「対立」が生まれるのかもしれません。

 しかし、「全部ワクチンが悪い」というわけではないのです。「巷で言われているから」というから鵜呑みにするのは、他山の石としなければいけません。

B型肝炎訴訟に関連した誤解とメディアの責任
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/5d1ddb1260462bbcacff9588488f91fd

新聞各社への問い合わせ結果(B型肝炎訴訟報道)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/8cb76977e31cea88deb478eed55326e6

 そもそも、母子感染のみのB型肝炎ワクチンという、変則的なものではなく、新生児全てにB型肝炎ワクチンを行うのが、まっとうでしょう。WHOの予防接種拡大計画(EPI)にもB型肝炎が挙げられており、世界の多くの子どもたちがB型肝炎ワクチンを受けています。日本の最近のB型肝炎は、慢性化しやすいタイプに移行しています。今後のことを考えれば、接種したほうがいいでしょう。

おまけ

 WikipediaのB型肝炎を見ていたら、こんな既述がありました。

近年、日本ではあまり見られなかったジェノタイプA(北米、欧州、中央アフリカに多く分布する)のB型肝炎ウイルス感染が広がりつつある。ジェノタイプA のB型肝炎ウイルスに感染した場合、その10%前後が持続感染状態(キャリア化)に陥る。本来、日本に多いジェノタイプCのB型肝炎ウイルスは、成人して からの感染では、キャリア化することはまれであったことから、ジェノタイプAのB型肝炎ウイルス感染の拡大には、警戒が必要である。これはこんなに 強調することは不要です。なぜならホモセクシャルの間での感染が見られるだけで、極めて稀にしか感染は起こらないからです。

日本では、戦後から昭和63年頃まで行われた幼児期の集団予防接種における注射針の使い回しにより、HBVウイルスが蔓延した。国は昭和23年には注射 針・注射筒の連続使用の危険性を認識していたが、40年にわたり使い回しの現状を放任していた。現在、推定150万人の持続感染者(キャリア)の内、集団 予防接種による感染者は30%前後と言われている。←根拠あるのでしょうか?もっと高いと思われます。

 イタリック体のなっているのは同一人物の修正です。その修正内容を確認してみます。

 「免疫不全(HIV感染下)の性交渉」だけではなく通常の性交渉でも、B型肝炎は感染するのですけれどね。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=B%E5%9E%8B%E8%82%9D%E7%82%8E&diff=32026271&oldid=31795155
http://megalodon.jp/2010-0514-2046-05/ja.wikipedia.org/w/index.php?title=B%E5%9E%8B%E8%82%9D%E7%82%8E&diff=32026271&oldid=31795155(魚拓)

2010年5月11日 (火)

口蹄疫と手足口病その違いは?

 口蹄疫が日本でも流行しています。十年ほど前にも流行しましたが、これほどの拡大はなかったはずです。

 「口蹄疫」と書くと難しそうですが、「口と蹄(ひづめ)の病気」という意味です。馬などの口と蹄に水疱などができるのです。英語では、foot-and-mouth-disease(FMD)といいます。英語のほうがわかりやすいですね。

 似たような病気に、「手足口病 hand-foot-mouse-disease(HFMD)」というのがあります。ともにウイルスで感染しますが、似たようで違うウイルスですし、口蹄疫は人間にはまず感染しないといわれています。

 口蹄疫の問題は、その感染力の高さおよび平たく言えば「売り物にならない牛」が出てくることだと思います。成獣では致死率が低いにもかかわらず、多くの牛が処分されています。少し前、トリインフルエンザでニワトリが大量処分されたのが思い出されます。当時自殺者が出ました。

 畜産業者の経済的損失や精神的苦痛ははかり知ることはできません。「処分」以外に何かいい方法はないものですかね?
横浜市衛生研究所:口てい疫(口蹄疫)について
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/fmd1.html

2010年5月 7日 (金)

皮下注と筋注

 予防接種をするときに、針をどこに刺すか見たとことがありますか?

 注射にはいくつかの方法があります。まずは、筋肉内に注射する筋肉内注射(筋注)、筋肉の上の脂肪組織の中に注射する皮下注射(皮下注)、さらに皮膚の薄い層の間(表皮と真皮の間)に注射する皮内注射があります。

http://ameblo.jp/king-of-nasubi/entry-10009084477.html

 外国のほとんどの予防接種は筋注です。子供の筋肉は少ないため、太ももの筋肉ですることもあります。とくに、DPTなどの不活化ワクチンは腫れやすいため、深く注射する筋注がいいのです。しかし、日本では原則として皮下注です。一部の小児科医は、DPTなどはやや深めの「筋注に近い皮下注」をしていると思います。

 しかし、何で日本だけ筋注はできないのでしょう?これには、悲しい歴史があります。

 日本でも筋注が医療施設で頻繁に行われていた時代がありました。「風邪を引いたらお尻に注射」といった感じです。その注射で、筋拘縮が起こる事件が起こりました。これが筋拘縮症です。局所的に多発したため、地域の名前を冠した病名で言われることもありました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%8B%E7%9F%AD%E7%B8%AE%E7%97%87

 ご想像のとおり、この病気は多くの場合特定の施設で、特定の薬剤で起こりました。メチロンという解熱剤が多かったです。風邪に必須の注射ではありません。筋注が悪かったのではなく、不要で危険な薬を筋注したのが悪かったのです。

 しかし筋拘縮症による訴訟が相次ぎ、「筋注=悪」というイメージが定着してしまったのかもしれません。

 桑畑メモ(注射禍の大腿四頭筋短縮症医原病について):タイトルだけで内容が予想できると思います。当時の患者さんの苦悩がわかります。
http://www.binsyodo.com/medicaldoc/kuwahata/kasahara2/chyusya.html

 筋短縮症事件:上と同じような内容です。
http://www.mi-net.org/yakugai/dacases/injection/injreduction.html

  ワクチンは皮下注で良いの?:成人のワクチンが中心ですが、各ワクチンでの考察があります。
http://www.nobuokakai.ecnet.jp/5093.html

2010年5月 6日 (木)

アタマジラミにご注意を!!

 学校や園で「お子さんにアタマジラミがありますよ」といわれてドキッとした方いませんか?「シラミ(虱)」というと、不潔だからなったんだとか、誰にうつされたんだとか、他の病気ももらってきてはないだろうか、これからいじめられないだろうか・・・こんな思いがぐるぐるしているかもしれません。でも、正しい知識があれば不用意に心配する必要はありません。

 頭に出来るシラミは「アタマジラミ」といいます。感染力が非常に強く、スクールバスのソファーでうつったということもあります。衛生状況が悪いから感染したと言うことはありません。また、シラミと言うとすごく痒くなるのではと思う人もいるかもしれませんが、無症状か「なんとなく痒い」程度のことが多いです。昔の人だと、「シラミ=チフス」と思う人もいるかもしれませんが、今の日本ではチフスになることはありません。

 そうなると、アタマジラミだからといって必要以上に神経質になることは無いでしょう。もっとおおらかに!!

 駆除の方法は、スミスリンというシャンプー(ピレスロイド系)を使うか、目の細かい櫛を使って物理的に除去する方法があります。しかし、スミスリンは最近耐性が報告されています。櫛ですく方法も、髪型によっては大変なことがあります。

 いつもながら、豊島区のアタマジラミ情報は良く出来ています(世田谷区は・・・)。
http://www.city.toshima.lg.jp/kurashi/gaichu/shirami/index.html

 国立感染症研究所で、アタマジラミの殺虫剤感受性検査を行っています。
http://www.nih.go.jp/niid/entomology/headlice/headlice.html

 個人のサイト(理髪店?)だと思うのですが、非常に良く出来ています。「頭髪衛生研究所シラミバスター」とはすごいネーミングです。上のサイトともに見てください。
http://www.s-buster.com/

2010年5月 1日 (土)

そろそろ麻疹の季節です

そろそろ(すでに?)麻疹流行のシーズンです。3年前(2007年)麻疹が学生の間で流行し、各大学が休校になったのは記憶に新しいところです。

 

麻疹(ましん・はしか)の特徴としては、

  1. 感染力が非常に強く、免疫が無ければまず感染する
  2. 麻疹初期には麻疹と診断できないことが多いので、周りに感染させやすい
  3. 重症度はかなり高い
  4. 合併症(脳炎・肺炎など)があると死亡率が高まる
  5. 麻疹にかかって数十年後にSSPEになる可能性がある
  6. ワクチンによって予防ができる
  7. ワクチンの効果が高くヒトにしか感染しないので、麻疹はワクチンによって根絶できる

 があげられるでしょう。ワクチンの効果が高いと書きましたが、これには限界があります。
 まず、ワクチン一回目の接種で免疫がつかない場合(PVF:primary vaccine failure)があります。ワクチンの効果は95%以上とされおり、5%弱の人がこれにあたります。
 次は、ワクチンをして免疫がついてから十数年経って、ワクチンの効果が切れてしまうことがあります。2007年の学生での流行がこれに当てはまります。これを、SVF: secondary vaccine failure と呼びます。
 これらに対応するためには、ワクチンの二度うちが必要です。海外ではごく普通に行われていたことですが、日本ではなかなか行われませんでした。

 日本でもようやく、麻疹ワクチンを麻疹・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)の二回接種が2006年から始まりました。2009年の麻疹流行は1000人以下だったということです。これもワクチンの接種率が向上したからでしょう。

 しかし、昨年の新型インフルエンザワクチンで問題が起きました。同時接種をしなかった場合、新型インフルエンザワクチンを優先させたため、MRワクチンの接種率が低下したというのです。
 麻疹はワクチン接種率が95%以上(90%?)あれば流行が抑えられるといわれています。今年はどうなるでしょうか?

 おまけ


Photo

 なんだが、麻疹じゃなくて水疱瘡(みずぼうそう)みたい。それに、ネコやネズミは麻疹にはなりません!!  

2010年4月13日 (火)

ポリオどうしますか?

 春になると、ポリオワクチンのシーズンです(ほかにも入学式とかお花見とか・・・)

 ポリオワクチンにはいろいろな思いがあるのですが、書き連ねていきます。

 以前日本でもポリオが流行し社会問題になっていた時がありました。1960年の時です。日本にはワクチンがないため、海外から輸入する必要がありました。ワクチンには口からの生ワクチン(OPV)と注射で行う不活化ワクチン(IPV)がありましたが、日本で緊急輸入されたのはOPVのでした。この件は本や映画にもなりました。
NHK記者であった上田哲氏の「根絶」
http://www.geocities.jp/hokukaido/konzetu/
その上田氏がモデルといわれる「われ一粒の麦なれど」
http://home.f05.itscom.net/kota2/jmov/1996_03/960302.html
日本とソ連(当時)の共同制作の「未来への伝言」
http://www.cdist.co.jp/film/010004/

 OPVの導入で、日本でポリオの自然発生はなくなりました。しかし、いろいろな問題が残りました。

1.回数が少ない:もともとOPVは3回接種するものです。緊急輸入した当時に二回の接種で流行が収まったので、そのまま二回接種になりました。十分な免疫がつかない可能性があります。

2.副反応:一般的にIPVよりもOPVの方が副反応が多いとされています。その一つは、VAPP(ワクチン関連麻痺: vaccine associated paralytic poliomyelitis)です。ポリオの生ワクチンで、ポリオになってしまうのです。数はわずかですが、避けることはできません。ワクチンのおかげでポリオは日本からなくなったはずなのに、ワクチンでポリオが発症するという事態が起きています。

3.ワクチンのウイルスが蔓延?:OPVは便から排出されます(ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV ; vaccine-derived poliovirus))。それをポリオの免疫が無い人に感染すると、ポリオになる可能性があります。実際、こどものオムツを取り替えたらポリオになったという人もいます。さらに怖いのはVDPVが、市井に流れることです(cVDPV circulating VDPV)。

http://www.npo-bmsa.org/wf061.shtml

 世界でまだポリオが流行している以上、ポリオワクチンを中止することはできません。先進国のみならず中進国といわれる国でのポリオワクチンは、より安全なIPVに移行しています。主要な国々でOPVを使っているのは日本だけでしょう。

 一刻も早い、OPVからIPVへの切替が望まれます。個人でIPVを接種したい方は、区内の個人クリニックで行っています。問い合わせてください。

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