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2011年4月16日 (土)

小児の細菌性髄膜炎ワクチンと同時接種について

 『知ろう!小児医療 守ろう! 子ども達』の会からの依頼原稿が無事、メルマガに載りました。「無事」と書いたのは、震災のために一ヶ月掲載が遅れたからです。許可を得て、転載します。

http://iryo000.web.fc2.com/pneumococcalhibvaccine.htm

 ご存じの方もいらっしゃると思いますが、「お子様に肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチン接種をお考えの親御様へ」を参考にしました。改めて、守屋先生・小宮山先生に感謝申し上げます。


 今年の三月に入り、ヒブワクチン(商品名アクトヒブ)や小児肺炎球菌ワクチン(商品名プレベナー)と三種混合ワクチン(DPT)を同時接種後になくなったお子さんの報告が相次ぎました。厚生労働省はヒブワクチン及び小児肺炎球菌ワクチンの接種の一時的見合わせを発表しました。

  その後会議が二回行われ、基礎疾患のあるお子さんでも原則同時接種も可能になりました。しかしながら、一部のロットのヒブワクチンで異物混入が報道されていますし、まだこれらのワクチンの接種すらためらう保護者もいらっしゃると思います。

 その内容も踏まえて、これらのワクチンについてお話しようと思います。

 1.ワクチンと同時接種について

 まずは、亡くなった6名のお子様のご冥福をお祈りします。

 今回、ワクチンが原因だとすると、二つ原因が考えられます。一つは、アレルギーの一種であるアナフィラキシーの場合。この場合接種してからアレルギーが起こった時間が短いほど症状も激しくなります。一般には長くとも間隔は数時間であり、今回の接種後13日経ってから激しいアレルギーを起こすことは考えられません。もう一つは、ワクチンの中に不純物が入っていてそれが不具合を起こした場合です。しかし、同一ロット以外での死亡例がありますので、これも考えにくいです。

 ここで、日本の乳児死亡の内訳という悲しい数字をご紹介しなければいけません。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000141ko-att/2r985200000145s8.pdf

 

 平成21年人口動態調査で、0歳の死亡者総数はそれぞれ2556名で、他の幼児年齢に比べて多いです。お産に関わることで亡くなった方も多いのですが、乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くなった赤ちゃんが145名と決して少なくはありません。単純計算ですが、日本では2-3日に1SIDSで亡くなる計算になります。そして、SIDS発症年齢はヒブワクチン・小児肺炎球菌ワクチン接種年齢と重なるのです。分母(接種者:ヒブワクチン150万・小児肺炎球菌ワクチン100万)と比べて死亡者がかなり少ないのも、確定的ではありませんがSIDSや他の疾患の紛れ込みを疑います。海外では大規模な調査が行われ、結論を得ています。今回の会議でも同様な結論で、ワクチン自体の接種も同時接種も普通にできるようになりました。

 厚生労働省も、今回の件でQ&Aを出しています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016yw1.html

 基礎疾患の項目に「万一重い副反応が生じた際などに、単独接種の方が、どのワクチンの接種後に起こったのかが分かりやすくなることなども考慮されます。」という下りがあります。これは会議では一度も出てこなかったはずです。

 同時接種に対して抵抗のある人が厚労省内にいて、こういった表現になったようです。しかし「万一食中毒を起こしたときに、単独食材のほうが、どの食材摂取後に起こったのか分かりやすくなる」という理由で、カレーライスを注文したらライスだけ(あるいはジャガイモだけ)出されたというレストランはないはずです。

 成育医療センター感染症科の齋藤昭彦先生も、基礎疾患のあるお子さんについて「感染すると重症化するので、できるだけ早く同時接種」と明言しています。

http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011026758SC000/

NHKあさイチ 「どうなってるの子どものワクチン」4月17日まで210円で視聴可能:1時間28分以降です)

 

2.ヒブワクチンの異物混入について

 二回目の会議の前ですが、3月11日に一部のヒブワクチンで異物混入があり回収されたという報道がありました。同日震災・原発事故というニュースがあり、記憶にない方もいらっしゃると思います。

 基本的には、死亡との関係はありません。厚生労働省のQ&Aが非常に分かりやすいです。該当するロットは、すでに回収されていますし、接種していたとしても局所刺激だけで、その後の健康に問題のないことは分かっています。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/110404.pdf

 

3.それでも心配な方へ--ゼロリスク探求症候群について

 しかしながら、やっぱりこのワクチンは怖いとか、同時接種はやめて欲しい、という意見も時々聞かれます。特に東日本大震災と東京電力原発事故(地名ではなく社名を書きます)の後で、安心・安全に対してみなさん今までよりも気に掛けていらっしゃるのは、肌身に感じます。

 一度中断するという行為は、すごく重いものです。海外では長年の実績があり、安全性が確認されているにもかかわらず接種を中断するということは、「やっぱりワクチンや同時接種は危ないのではないか」という誤解をうみます。

 マクロ(疫学)なデータでは因果関係は否定されても、ミクロ(個々の事例)では100%因果関係を肯定することも否定することもできません。ワクチンが原因でないと言い切るには「実はワクチンを接種していませんでしたよ」という証拠を見つけるしかないのです。

 「ゼロリスク探求症候群」は現在長崎大学教授の池田正行医師がBSE騒動の時に提唱した言葉です。

http://homepage3.nifty.com/~hispider/bse.html

 簡単にいえば「ゼロリスクを求めるあまり,その行動が大きな社会問題を起こすことに気づこうとしない心理」です。ワクチンにゼロリスクを求めることは、長い目で見れば社会的に不幸になることは歴史が証明しています。なにより同時接種による死亡リスクは、医学上認められない冤罪である可能性が限り無く高いです。もともと無い(冤罪の)リスクをなくせというのは、無理な話です。

 しかしながら、やはり心配だ・不安だという方もいらっしゃると思います。

 仮の話としてワクチンと死亡の因果関係があったとしても、ワクチンをせずに髄膜炎になって命を落としたり後遺症を残したりするお子さんのほうがずっと多いと予想されます。

 日本で毎年何100人というお子さんが細菌性髄膜炎にかかり,そのうち1-2割のお子さんが命を落とし,3割のお子さんが重い後遺症で苦しんでいます.(ヒブによる髄膜炎にかかるお子さんが年間約400人,肺炎球菌髄膜炎が年間約140 人)。諸外国では10-20年前に既にこの2つのワクチンが導入され,小児の細菌性髄膜炎が劇的に減りました.日本の全ての小児がこの2 のワクチンを接種すれば,今まで亡くなってきた年間数10人~100人前後の命が救われるようになるはずです。

 「限りなく白に近いが、完全に否定することはできないワクチンの危険性」と、「既にはっきり しているワクチンを打たずに髄膜炎にかかる危険性」の両方を、医療側も保護者も考える必要があります。

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