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2011年3月11日 (金)

ワクチンにゼロリスクを求める行為

皆さんは電車や車に乗る時、または公道を歩く時に、安全を完全に確認してからにしますか?逆にいえば、危険性を全て排除できる自身はありますか?

BSE騒動の時に、池田正行先生(現在長崎大学教授)が、ゼロリスク探求症候群という言葉を提唱しました。

Massie Ikeda:BSE

簡単にいうと「ゼロリスクを求めるあまり,リスクバランス感覚を失い,他人が犠牲になることも理解できなくなる病的心理」です。確かにリスク無駄に抱えることはストレスがかかります。しかし、生き物全ては産まれながらにしてリスクを抱えています。リスク全てを排除しようとすると、個人的にも社会的にもより不都合になるのです。

池田先生のサイトを参考にしながら、事例をあげて行きます。

1.感染症・中毒といった病気や,食品・飲料水といった生存に必須な物資の安全性を求める行動が根本にあるので,正当化されやすい.例:病気になりたくない,生活必需品を確保したい.

今回の例:ワクチンの副作用で子どもを失いたくない。

2.リスクを過大に評価する誤解やデマが背景にある.例:らい病は不治の病であり,接触によりうつる,MRSAは凶暴なばい菌だから,保菌者は隔離しなければならない.BSEの牛の肉を食べると必ずクロイツフェルトヤコブ病になる.

今回の例:亡くなったのは同時接種が原因。

3.個人レベルでは影響がないか,ごく小さい.例:らい病患者が隔離されても,自分は痛くも痒くもない.自分一人が牛肉を控えることと,焼肉チェーン店が倒産して大量の失業者が発生することとは直接関係ない.

今回の例:ワクチンをすぐにしなくても、細菌性髄膜炎に直ぐにかかることはまずない。私には子どもがいないから関係ない。

4.しかし多数派化・集団化によって社会問題化する.例:らい病やMRSA保菌者の隔離問題は言うまでもなく,炭疽菌感染の予防にと,たくさんの健康な人が抗生物質を要求することによって,本当に必要な人に行き渡らなくなるような事態もそうです.

今回の例:日本の子ども達が、細菌性髄膜炎のリスクに晒される。

5.ゼロリスク探求により生じた社会問題の責任を,行政やメディアに求める. 例:らい病患者の隔離はすべて旧厚生省が悪い.BSEの発生はすべて農水省が悪い.BSEの風評被害はすべてメディアが悪い.炭疽菌用の抗生物質が足りなくなるのは,すべて厚労省と薬品会社の対応が遅いからだ.こういった論理の背景には,自分自身の責任を認めたくない,自分はあくまで無垢な一般市民であると考えたい心理が働いています.そのためには,役所のような,決して反撃してこない公組織は絶好の攻撃対象です.

今回の例:そのまんまです。

次の段落も私が解説するよりも、そのまま引用した方がいいと思います。長いですが、ご覧ください。

ゼロリスク探求症候群への対処がやっかいな理由も,以上の特徴で説明できます.すなわち,1の安全を求める行動は非難できないばかりか,しばしば正義を主張します.2の誤解やデマは,正しい情報へのアクセスを確保することにより,ある程度対処できますが,社会的なパニックの時は,間違った情報の方が大量に出回り,正しい情報が埋もれて見えなくなってしまいます.また,パニックの時は行政機関が非難の対象になっていることが多く,そこからの情報が信用されません.数少ない中立機関が情報発信すると,各方面からの問い合わせが殺到して,機能が麻痺してしまう恐れもあります.3,4の,個人の行動が社会問題を引き起こすということは,理屈ではわかっていても,1の安全を求める行動が優先して,しばしば抑制が効きません.このため,5の,行政やメディアといった組織を非難の対象にして,個人の責任を問わないという逃げ道が作られます.

今回の場合(も)悩ましいのは、マスコミ自身がゼロリスク探求症候群に陥っている事です。ニュースでも「同時接種で死亡」と流している例が目立ちます。

ワクチンにゼロリスクを求めることは、「交通事故に絶対遭いたくないから、外には出ない」という論理と同じで、個人的にも社会的にも不幸な事です。社会的でワクチンにゼロリスクを求めたために、ワクチンで防げる病気(VDP)が生じた例は歴史が証明しています。 ましてや今回のリスクは、紛れ込みの冤罪である可能性が限りなく高いです。無いはずのリスクを絶対になくせということは、無理な話です。

もちろん、理由はどうであれ亡くなったお子さんのご冥福はお祈ります。保護者の方は深い悲しみに今も包まれていると思うと、いたたまれません。ワクチンとの因果関係を証明して支給される日本の補償制度ではなく、アメリカのような無過失補償制度(因果関係を証明しなくても支給される)を望みます(もちろんお金の問題ではないのですが)。

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