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2010年11月 4日 (木)

ベビースリングの危険性・安全性

 先日のベビースリングに関する内容は、アクセス数が増えました。それだけ、関心があるのでしょうか?

 ベビースリングの問題点をいくつかあげておきます。

1.股関節脱臼の可能性

 赤ちゃんの股関節は外れやすいです。一昔前は、先天性股関節脱臼(せんこだつ)といわれてきましたが、出生後も股関節脱臼を起こすこともあり、必ずしも先天性ということではありません。原因はいろいろとありますが、モンゴロイド系(日本人も含める)の女児がなりやすいといわれています。足をのばしたままにしておくと、脱臼しやすいです。逆に、開排位(股を開いて足をM字に広げる)にすると、脱臼しにくいといわれています。

 ベビースリングで、足をのばしたままにしておくと股関節脱臼になりやすくなる可能性があります。歩きだすまで、特に3ヶ月くらいまではは、股を開く形がいいです。とくに抱っこするときは、いわゆる「コアラ抱っこ」がいいでしょう。

 ところが、ベビースリングを扱っている会社で、コアラ抱っこを推奨しているところは少ないです。もともとベビースリングは、股関節脱臼の少ない欧米で考え出されたということもありますが、そのまま日本に当てはめるわけにはいきません。

 日本でのベビースリングに関するサイトを覗いてみると、股関節脱臼やコアラ抱っこに言及してるいることは少ないのに驚かされます。

http://www.baby-rose.jp/benri/babaluna/howto.html (魚拓)
 新生児からの抱き方は、イージータイガー(何という名前)、コアラカドル(いわゆるコアラ抱っこ)、ブレストフィーディング、スリーピングタイガー、リトルピギーですが、開排位なのはコアラカドルだけです。股関節脱臼の言及もありません。

http://item.rakuten.co.jp/auc-babyjacksons/babasling-oth040/ (魚拓)
 こちらは、新生児はイージータイガーのみ。股関節脱臼の説明はありません。

http://www.babywearing.jp/netshop/sling/howto/ (魚拓)
 こちらは股関節脱臼の説明もあり、新生児でもそれに対応した抱き方が細かく載せてあります。ただ、首の据わっていない赤ちゃんに対応するには、注意が必要です。

 余談ですが、日本では少し前は巻きおむつもありました。これは足をのばすために、股関節脱臼の発生率が高かったといわれています。モンゴルでは寒いためか、いまだに巻きおむつであり、股関節脱臼も多いようです。

 スリングと股関節脱臼については、こちらもいいです。

http://honbaka.seesaa.net/article/25254710.html (スリングの話)
http://ameblo.jp/happyhughug/entry-10024452881.html (股関節脱臼の予防について)

2.窒息の可能性

 抱っこした時の密着具合では、胸や口が圧迫されてしまいますし、首が据わっていないばあいで首を過度に曲げれば、気道は容易に閉塞します。ベビーシートと違い、抱っこをする側の体位や布の状態で、赤ちゃんの簡単に圧迫されるのです。

 もうひとつ心配なのは、赤ちゃんの顔が外に出ているかです。顔が外に出ていれば、呼吸の状態や顔色が観察できます。しかし、布でくるまれてしまえば分らなくなります。布自体で赤ちゃんの口をふさぐ可能性も出てきます。

 再掲しますが、カナダの保健省では危ない抱っこの方法を写真付きで載せています。
http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2010/2010_36-eng.php

 実際、窒息の可能性があるということで、日本でも回収された商品があります。スリングライダーという商品です。
http://www.lumica.co.jp/?p=231

 国民生活センターの注意喚起でも、同じ商品が載っていました。

Sling1_2


Sling2

 これでは、赤ちゃんの顔が見えませんね。

3.転倒の可能性

 抱っこひも一般に言えることですが、抱っこしている人が転べば、赤ちゃんも落ちてしまいます。とくにベビースリングで抱き方によっては、抱っこしている人が前かがみになれば、赤ちゃんだけ落ちてしまう可能性もあります。また、ある程度大きくなれば、思いがけない赤ちゃんの動きで落ちてしまう可能性もあります。装着の時にも要注意です。

 いろいろと書きましたが、ベビースリングが危険だからすべての年齢で使うな、というわけではありません。ただ、ベビースリングの使用にあたって十分注意することと、注意喚起の乏しい現状では首の据わっていない赤ちゃんでの使用は控えたほうがいいのでは、とは思います。

 今の日本で、ベビースリングのイメージに関する情報は多くても、安全性や危険性に関する情報は驚くほど少ないです。

 (もし続けば)次回は、ベビースリングの安全マーク。SGマークとSSマークについて、です。

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コメント

いつもありがとうございます。
私が学生の頃、小児整形外科のトピックのひとつが、先天性股関節脱臼(LCC)でした。最近は「先天性」というより「発達性(Developmental)」とも言われるそうですね。

当時、布オムツ全盛で、腰から下を包むような巻方でした。それですと両膝が揃って前を向く下肢になり股関節の屋根の部分(臼蓋)の発育に好ましくないと言われて、股おむつにして左右の膝が外向きに。その後、紙オムツが発売されて、一気にLCCが減ったと聴いいてます。

LCCが減ったのは自然の流れではなくて、抱き方、紙おむつ、などの注意をするからですね。スリングに潜って長時間左右の膝小僧が揃って前を向くような抱き方は股関節にも良くないと思います。

抱っこするときは、左右の下肢が開排位(いわゆるガニ股)にしたいものです。最近流行りの横抱きでは下肢が揃ってしまい、動きも制限されるので、長時間横抱きはまずいんじゃないかと感じます。

また、上下繋がったベビー服では下肢の動きが制限されるので、上下別々がいいと思います。

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