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2010年9月15日 (水)

細菌性髄膜炎は初期で100%疑えるのか?

 昔々のはなし、小児科は腸重積・虫垂炎・細菌性髄膜炎・急性喉頭蓋炎を見逃してはいけないといわれていました。

 当然のことながら、この命題は変わりようがありません。しかしながら、どれも100%の診断で行うことはできません。

 細菌性髄膜炎の初期や occult bacteremia (隠れた菌血症)は、熱だけで機嫌がよいこともあります。採血や髄液検査でも見た目は問題なく、後日培養で細菌が見つかったということもあります。赤ちゃんの発熱は機嫌がいいかチェックするのはとても大切ですが( not doing well)、機嫌だけではわからないこともあり、小児科医や保護者を悩ませるのです。

 そのために、複雑なガイドライン(Baraffの指針)などが開発されましたが、これでももれてしまうことはあります。
http://sites.google.com/site/oogucci/%EF%BC%9C%E7%99%BA%E7%86%B1%EF%BC%9E

 しかし、肺炎球菌ワクチンやHibワクチンが導入された国では、複雑なガイドラインをほとんどもちいらることはなくなりました。各種細菌性髄膜炎ワクチンを広く使うことで、上に挙げた細菌性髄膜炎・急性喉頭蓋炎などはほとんどなくなったからです(0ではないのです)。

小児上気道炎および関連疾患に対する抗菌薬使用ガイドライン ―私たちの提案― http://www004.upp.so-net.ne.jp/ped-GL/GL1.htm

にある、

 <付記>
 本ガイドラインの基となったBaraffの指針は米国ではすでに過去のものとなり,対象者はHibワクチン,7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV-7) の未接種者に限られている。Hibワクチンの導入後には,Hibによる重症感染症はほぼ絶滅するはずである。PCV-7は肺炎球菌によるOBの約70%に 効果がある34)。重症細菌感染の予防と抗菌薬の使用量を減らすために,わが国でもこれらのワクチンの早期導入が強く望まれる。両ワクチンが導入された時,フォーカス不明の発熱のガイドラインはその役割を終えると思われる。

は極めて印象的です。

 話は変わって最近の裁判の話題です。

http://mainichi.jp/area/tottori/news/20100914ddlk31040747000c.html

境港の医療過誤訴訟:医師に5565万円賠償命令--地裁米子支部 /鳥取

 息子が細菌性髄膜炎で死亡したのは初診時のミスが原因だとして、境港市の両親が市内の診療所(廃止)の理事長だった男性医師に7440万円の損害 賠償を求めた裁判の判決が13日、鳥取地裁米子支部で言い渡された。村田龍平裁判長は医師のミスを認め、5565万円の賠償を命じた。被告代理人の弁護士 は「控訴を検討する」としている。

 判決によると、会社員だった長男(当時36歳)は01年12月18日、40度近い発熱、頭痛、おう吐のため医師の診察を受け、座薬や鎮痛剤など4 日分を処方された。長男は翌日、意識不明となり、搬送先の病院で細菌性髄膜炎と診断されて入院。05年1月6日に松江市内の病院で死亡した。

 判決は「症状から髄膜炎を疑うべきなのに、診察が不十分なうえ、設備の整った医療機関に転送させなかった過失がある」と判断。過失と死亡との因果関係も認定した。

 被告側は「初診で見抜くのは困難だった」と反論していたが、「重症の急性感染症が疑われ、設備の充実した医療機関を紹介すべきだった」とした岡山大の感染症専門家による鑑定結果を判決は全面的に採用した。

 両親は「息子の墓前にいい報告が出来る」と話した。【小松原弘人】

 まずは亡くなった方にお悔やみ申し上げます。この年の細菌性髄膜炎は子供で起こす菌(Hib・肺炎球菌)ではなく髄膜炎菌のほうが多いです。日本では比較的少ないとされていますが、年間10例ほど入るようです。

 この裁判例では不明ですが、一般的に細菌性髄膜炎を初期で診断するのは不可能に近いです。唯一の予防はワクチンですが、残念ながら髄膜炎菌ワクチンは国内では認可されていません。ワクチンもなく初期診断も難しい髄膜炎菌性髄膜炎に対して、この判決は厳しいのではと思います。

 早く、打つべきワクチンが打てるようになる時代が来てほしいです。

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