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2010年5月

2010年5月31日 (月)

新型インフルエンザ肺炎 病気の主座は?

第24回小児救急医学会(京都)に行ってきました。

 いろいろな話題がありましたが、新型インフルエンザ肺炎がトレンドでした(最近は「新型インフルエンザ」をPandemic (N1H1) 2009 influenzaとも呼びますが、呼称はまた変るかもしれませんね)。

 いろいろな話をまとめてみると、

(いままでの)インフルエンザ脳症:全身のサイトカインストーム
「新型インフルエンザ」肺炎:肺のサイトカインストーム

 と言うことかな、と思います。病気の主座が違うのです。

 どうして、新型インフルエンザ肺炎では肺にだけサイトカインストームが起きるのかということは、また後で書きます。
 「サイトカインストーム」の説明で、いいのがあったので載せておきます。日付を見てもらえればわかりますが、これは2008年の書き込みであり「新型インフルエンザ」が発生する前のものです。優駿です。
(いわゆる)サイトカインストーム

2010年5月28日 (金)

子どもの事故・傷害は防げるか?

 先日、山中龍宏先生の講演会に言ってきました。山中先生は、開業医でありながら子どもの傷害について取り組んでいらっしゃいます。先生の系統だった業績を示すサイトや著作を探してみたのですが、残念ながらなかなかいいものがありません。このくらいかな?
http://www.crn.or.jp/LABO/BABY/SCIENCE/YAMANAKA/index.html
http://scienceportal.jp/highlight/2009/090213.html

 日本での子どもの死因は「不慮の事故」が多いです。不慮の事故は多くの場合、「親の責任、監督者の責任、園の責任」で終わってしまいました。問題が起こっても、「注意しましょう」という精神論だけでは、また同じ事故がどこかで起こります。
 事故(アクシデント)は、不可抗力という意味合いを持ちます。しかし、多くの「不慮の事故」は、防ぎえるのです。だから、事故ではなく傷害(インジャリー)と言うべきです。傷害というのは人為的な意味合いがあり、すなわち防げる可能性があるのです。
 薬のビンに「危険」とか「子どもの手の届かないところにおきましょう」というラベルを貼るよりも、蓋をあけにくくしたり、中毒量にならない量のビンにするといったほうが、遥かに「不慮の事故」を予防できます。

 日本の社会というのは、健康な成人(とくに男性)のためにデザインされた社会であるとよく言われています。つまり、子ども・高齢者・障がい者・女性には優しくない社会です。そういった社会で、弱い人にひずみが来るのは当然でしょう。

 子どもの傷害は(親のせいではなく)社会の責任、といえるようになりたいです。

 ついでに言えば、予防接種を含めた子どもの健康管理は、親のせいだけではなく、社会の責任ですよね。

2010年5月27日 (木)

ワクチンのパブリックコメント募集中!!(あと数日・・・)

 厚生労働省が、予防接種に関するパブリックコメントを募集しています。

 実は、今月末までです。遅くなってすみません。
http://www.know-vpd.jp/news/629.php
http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p100422-1.html

 今まで書いてきたように、日本のワクチン行政・ワクチンに対する一般的な考え方というのは、世界と比べてみてもずいぶん遅れています。私自身も歯がゆい思いをしてきています。
 IDATEN(日本感染症教育研究会)のメンバーもパブリックコメントをパブリックしています。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/3545e06f6945b5b8d0ca7410a860aa31

 それぞれ、すばらしい意見だと思います。しかし、これに収まりきれない意見もあると思います。これは、と思う方は厚生労働省にメールをお願いします。

2010年5月20日 (木)

救児の人々〜医療にどこまで求めますか 

 近年、東京でも周産期医療の充実が叫ばれています。いわゆる「たらいまわし」が問題となり(これは定義から言っても倫理的にも正しくない言葉です)、東京でも、スーパー総合周産期センターというのができました。ハイリスク妊婦を断らないというものです。

 周産期のリスクは産科・新生児科のみで解決できるものではありません。脳神経外科・麻酔科・心臓血管外科・小児外科などが必要になることがあります。「断らない・全力を尽くす」というのは、ハード面・ソフト面で非常にコストや労力の要ることです。

 その結果どうなるかはほとんどの人が想像したことがないでしょう。妊娠24週で産まれた赤ちゃんを見たことがありますか?加熱と湿気で内面が曇るくらいの大きな保育器の中に、とても小さな赤ちゃんが入ってます。皮膚はみずみずしいまでに半透明で体も手足も驚くほどに細いです。点滴も赤ちゃんの手と同じくらいの大きさのものが入っています。口には空気を入れるためのチューブが入っているので、産声も出せませんし、チューブを外しても声を出すことはないでしょう。残念ながら、このような赤ちゃんが、全員、後遺症なき生存(インタクトサバイバル)で退院できるわけではありません。自力で呼吸やミルクを飲むこともできず、介護を一生必要とすることもあるのです。「たらいまわし」を非難し、周産期医療の充実を叫ぶ人たちは、こういった現実を直視しているのでしょうか?

この現代社会の病巣ともいえるような、国民の倫理観や死生観の欠如、自分たちが社会を構成する一員であるという意識と想像力の欠落、それを助長させる社会構造、それらが新生児医療に凝縮されていた。

 ロハス・メディカルから出版される予定の「救児の人々〜医療にどこまで求めますか」の前文です。文字通り、新生児医療の問題を言い表している一文だと思います。
http://lohasmedical.jp/blog/2010/04/nicu_2.php

 6月19日までの期間限定で、PDFで読むこともできます。でも、皆さん予約して買いましょうね
http://lohasmedical.jp/books/

2010年5月16日 (日)

ポリオワクチン

 先日仕事のためアメリカに一家で住むことになるということで、ワクチン相談を電話でした方がいました。アメリカでは、必要なワクチンをしていない場合は小学校に入学できないということもあるのです。

 日本とアメリカのワクチンには埋めがたい溝があるのですが、特に問題になるのが、ポリオとBCGです。BCGをするとツベルクリン反応が陽性となるのですが、BCGをしないアメリカでは「ツベルクリン陽性=結核菌陽性」であり、本当の結核でなくても、レントゲン写真や場合によっては結核のお薬を長期間(確か9ヶ月!)内服することが求められます。結核とBCGについては、また改めて書こうかと思います。

 ポリオは生ワクチン(OPV)であれば3回以上。不活化ワクチン(IPV)とOPVの組み合わせであれば、4回以上するのが通常です。実際はOPV単独でも4回接種を勧める人もいます。国によっては10回以上ポリオワクチンをするところもあるようです。

 以前「ポリオどうしますか?」で書いたように、副反応の多いOPVを先進国で行っているのは、日本だけです(逆に言えば、ワクチンに関しては日本は後進国ともいえます)。IPVへの導入が叫ばれていますが、「遅々として進まず」です。ポリオの会でも嘆いています。

不活化ワクチン製造は2年後には、3年後には、いま準備中・・・と何年言い続けられたでしょうか。アメリカが完全に不活化に切り替えた10年前、せめて1年前、不活化に切りかえられていたら、ポリオを発症せずにすんでいた子どもたちが何人もいます。そして、生ワクチンを使い続ける限り、ポリオを流行させ続けるのです。ウイルスの垂れ流しで世界中を危険にさらすと言ったら大げさと思われるでしょうか。しかし、生ワクチンのウイルスの強毒化で、各地で何度もポリオ流行が起きています。二次感染、三次感染の危険性がなおざりにされています。http://www5b.biglobe.ne.jp/~polio/

 何で、早く不活化ワクチンを導入しないのでしょう?厚労省は、子どもに目を向けているのでしょうか?それとも天下り先?

 個人的には、もしIPVの供給量が足りないということであれば、IPVを二回した後にOPVを二回する方法がいいと思います。アメリカでも通用する方法です。そして何より、ごくまれに起こるOPVによるVAPP(ワクチン関連ポリオ麻痺)を防ぐことができます。

 勿論、最終的にはOPVを廃止して、IPVをほかのワクチンと混合するのがいいと思います。

 私の方法(IPV+OPV)はともかく、ポリオの会に賛同される方は、是非とも署名をお願いします。

http://www5b.biglobe.ne.jp/%7Epolio/2010polio.pdf

2010年5月14日 (金)

B型肝炎訴訟

本日のニュースです。

B型肝炎訴訟 国、和解協議入りを正式表明 札幌地裁 http://www.asahi.com/health/news/TKY201005140181.html

 集団予防接種の注射器の使い回しなどが原因でB型肝炎ウイルスに感染したとして、・・・・

 これをみて、皆さん今のB型肝炎の患者さんは、ほとんどが予防接種のまわしうちによってうつったのでは、と思うかもしれません。

 ところが必ずしもそうではありません。

 B型肝炎とは、血液によって感染しますが、大きく分けて二つの経路があります。ひとつは、母親から生まれる際に感染する「垂直感染(母子感染)」。もうひとつが、血液・体液を介して感染する「水平感染」です。

 垂直感染では、新生児の感染対策が施されて激減しました(0ではありません)。水平感染は今も続いています。

 以前診た慢性B型肝炎の患者さんは、感染経路がわからないということでした。母子感染でもないし、年齢から言っても予防接種が原因ではありません。そういえば、ゲームセンターのトイレに無造作に捨ててあった(!)注射器の針を触れてしまったから、肝炎やHIVの検査をしてほしいという人もいました。麻薬の回し打ちが横行している地域でした。

 原告団が「一律救済」を求める気持ちはよくわかります。感染したのはその人の責任ではありませんし、いやな言葉ですが線引きされることで「対立」が生まれるのかもしれません。

 しかし、「全部ワクチンが悪い」というわけではないのです。「巷で言われているから」というから鵜呑みにするのは、他山の石としなければいけません。

B型肝炎訴訟に関連した誤解とメディアの責任
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/5d1ddb1260462bbcacff9588488f91fd

新聞各社への問い合わせ結果(B型肝炎訴訟報道)
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/8cb76977e31cea88deb478eed55326e6

 そもそも、母子感染のみのB型肝炎ワクチンという、変則的なものではなく、新生児全てにB型肝炎ワクチンを行うのが、まっとうでしょう。WHOの予防接種拡大計画(EPI)にもB型肝炎が挙げられており、世界の多くの子どもたちがB型肝炎ワクチンを受けています。日本の最近のB型肝炎は、慢性化しやすいタイプに移行しています。今後のことを考えれば、接種したほうがいいでしょう。

おまけ

 WikipediaのB型肝炎を見ていたら、こんな既述がありました。

近年、日本ではあまり見られなかったジェノタイプA(北米、欧州、中央アフリカに多く分布する)のB型肝炎ウイルス感染が広がりつつある。ジェノタイプA のB型肝炎ウイルスに感染した場合、その10%前後が持続感染状態(キャリア化)に陥る。本来、日本に多いジェノタイプCのB型肝炎ウイルスは、成人して からの感染では、キャリア化することはまれであったことから、ジェノタイプAのB型肝炎ウイルス感染の拡大には、警戒が必要である。これはこんなに 強調することは不要です。なぜならホモセクシャルの間での感染が見られるだけで、極めて稀にしか感染は起こらないからです。

日本では、戦後から昭和63年頃まで行われた幼児期の集団予防接種における注射針の使い回しにより、HBVウイルスが蔓延した。国は昭和23年には注射 針・注射筒の連続使用の危険性を認識していたが、40年にわたり使い回しの現状を放任していた。現在、推定150万人の持続感染者(キャリア)の内、集団 予防接種による感染者は30%前後と言われている。←根拠あるのでしょうか?もっと高いと思われます。

 イタリック体のなっているのは同一人物の修正です。その修正内容を確認してみます。

 「免疫不全(HIV感染下)の性交渉」だけではなく通常の性交渉でも、B型肝炎は感染するのですけれどね。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=B%E5%9E%8B%E8%82%9D%E7%82%8E&diff=32026271&oldid=31795155
http://megalodon.jp/2010-0514-2046-05/ja.wikipedia.org/w/index.php?title=B%E5%9E%8B%E8%82%9D%E7%82%8E&diff=32026271&oldid=31795155(魚拓)

2010年5月11日 (火)

口蹄疫と手足口病その違いは?

 口蹄疫が日本でも流行しています。十年ほど前にも流行しましたが、これほどの拡大はなかったはずです。

 「口蹄疫」と書くと難しそうですが、「口と蹄(ひづめ)の病気」という意味です。馬などの口と蹄に水疱などができるのです。英語では、foot-and-mouth-disease(FMD)といいます。英語のほうがわかりやすいですね。

 似たような病気に、「手足口病 hand-foot-mouse-disease(HFMD)」というのがあります。ともにウイルスで感染しますが、似たようで違うウイルスですし、口蹄疫は人間にはまず感染しないといわれています。

 口蹄疫の問題は、その感染力の高さおよび平たく言えば「売り物にならない牛」が出てくることだと思います。成獣では致死率が低いにもかかわらず、多くの牛が処分されています。少し前、トリインフルエンザでニワトリが大量処分されたのが思い出されます。当時自殺者が出ました。

 畜産業者の経済的損失や精神的苦痛ははかり知ることはできません。「処分」以外に何かいい方法はないものですかね?
横浜市衛生研究所:口てい疫(口蹄疫)について
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/fmd1.html

2010年5月10日 (月)

32.DIC

序論で「何らかの基礎疾患の存在下において」が強調されている。VOD/TMAについて解説あり。

I 診断
序論に一部変更あり。「DICを起こしやすい疾患」の項が表に移行。

B 検査所見
「線溶系の亢進」が「凝固系マーカー」「線溶系マーカー」に分離。
「*感染症に伴うDICではフィブリノゲン低下・FDP/D-dimer増加は軽度であり注意を要する。*PTはDICのみならず、肝不全やビタミンK欠乏症などでも延長する。」が追加。

C 診断基準
 かなり変更されている。overt DIC/ non-over DICの言及が少なくなっている。「・・・特に症状の進行の早い小児DICにこの基準をそのまま適応すると診断が遅れる恐れがあるので、現実には多くの臨床家は診断基準を満たす前にDIC治療を開始している」などの記載あり。

D 病型
 「凝固優位型DIC」「線溶優位型DIC」の分類が、「線溶抑制型DIC(臓器傷害方、凝固優位型)」「線溶均衡型DIC(無症候型、中間型)」「線溶優位型DIC(出血型)」に変更。解説も変更あり。。

II 治療
A 基礎疾患の治療
 「最も重要なのは原因となっている基礎疾患の治療である」が強調文字。

B 抗凝固療法
 「前述のエキスパートコンセンサスでは病態別に推奨薬剤を示している」が追加。エビデンスレベルを示した表も追加。

C 抗線溶療法(トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸)
 「感染症に合併したDICなど線溶抑制型DICに対しては、臓器傷害や全身性血栓症などの重大な合併症をきたすため原則禁忌である。」が強調文字で追加。
 一部の症例[固形癌、腹部大動脈瘤、Kasabach-Merritt症候群、急性骨髄性白血病(ATRA非使用)]などでDICの出血に対して著効するが、ヘパリン類の併用とともに専門化のコンサルトが得られない場合は使用を控えたほうがよい。」が追加。

D 線溶療法[組織型プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)、ウロキナーゼ型PA(UK)]
 新しい項目、「致死的な血栓症に対しては例外的に線溶療法が行われる場合がある。」との記載あり(「例外的」が強調)。

E その他DICで使用される薬剤
 これも新しい項目。プロテインC,ウリナスタチンについて記載あり。遺伝子組換えトロンボモジュリンについては、新たに追加。

F 補充療法(輸血療法)
 「厚生労働省の血液製剤治療指針によると、次の場合に補充療法を行う。1)フィブリノーゲン≦100mg/dl 2)凝固因子活性≦30% 3)AT-III≦70%」が削除。「基礎疾患の治療と抗凝固療法を最優先し、出血や凝固異常を伴う急性DICによいて補充療法を併用する。敗血症に伴うDICなど線溶抑制型のDICは、臓器症状は強いが出血症状を呈することは少ないため、補充療法を必要としないことも多い。」が追加。

(1) 新鮮凍結血漿(FFP)
 適応基準が追加。「*後天性TTPの場合、FFPを用いた血漿交換が最も有鉤である。」が追加。
(2) 血小板輸血
 「著明な出血あるいは観血的処置が必要な場合が適応となる」が追加。「TTP類似の病態を合併する場合には、血漿交換なしにPC投与を行うと症状が急速に増悪することがあるため注意を要する」が強調文字で追加。

30.肝不全

I はじめに
A 定義
 表記が一部変わっている。
 「小児の特徴は・・・乳幼児では意識障害は遅れて出現し、早期の診断には役立つとは限らないことに留意する。凝固障害や各種肝機能検査値の推移をふまえ急性肝不全と診断する。」が「小児の肝不全の特徴は・・・乳幼児では診断しにくいので、凝固障害や肝機能検査値、画像所見の推移をふまえ急性肝不全と診断し、早期に治療を開始する必要があることである。」に変更。
B 分類
 「原因は年齢により異なり、感染症、薬剤自己免疫あるいは血液疾患、原因不明の頻度が高い。」が追加。

II 診断
 「凝固異常を伴う高度の肝機能障害を認めたら直ちに入院とする。急性肝不全と診断されればICU管理となる。集中治療室、感染免疫科、内分泌代謝科、神経内科、外科などと連携して、診断治療を行う」が追加。「超音波で肝萎縮や腹水所見などである。肝生検は慢性肝疾患の有無、肝壊死の程度や偽胆管増生、血管病変などの情報が得られ有用だが、出血の危険性があるので慎重に行う」が追加。

III 治療
A 治療の目的
 表記は異なるが、おおむね同じ。
C 全身管理
 アンモニアの対策で、硫酸ポリミキシンBおよびファンギゾンの経口投与が追加。
 「持続血液ろ過透析(CHDF)」が「持続血液ろ過透析(CHDF特に high flow CHDFが選択される)。」に変更。「肝性脳症、腎不全、凝固因子低下、電解質異常などの治療にはCHDFが必要で、PEXと組み合わせることが望ましい。そのため血液量1-4ml/mL/kg/分の得られるブラッドアクセスや大量の透析液を準備する。抗凝固療法としてフサンやオルガランを使用することが多い。」が追加。

IV 予後予測
 予測の指標が異なっている(表も)。画像診断や肝生検所見についても言及あり。「生体肝移植の場合、十分なインフォームドコンセントの手続きとともに生体ドナーの自主的な意志決定を確認。」が「生体肝移植の場合、十分なインフォームドコンセントの手続きとともに生体ドナーの自主的な意志決定を確認し、さらにドナーの適性検査を行わなければならない。時間的余裕が無いことが多いので無駄なく準備をすすめる。」が追加。

2010年5月 7日 (金)

皮下注と筋注

 予防接種をするときに、針をどこに刺すか見たとことがありますか?

 注射にはいくつかの方法があります。まずは、筋肉内に注射する筋肉内注射(筋注)、筋肉の上の脂肪組織の中に注射する皮下注射(皮下注)、さらに皮膚の薄い層の間(表皮と真皮の間)に注射する皮内注射があります。

http://ameblo.jp/king-of-nasubi/entry-10009084477.html

 外国のほとんどの予防接種は筋注です。子供の筋肉は少ないため、太ももの筋肉ですることもあります。とくに、DPTなどの不活化ワクチンは腫れやすいため、深く注射する筋注がいいのです。しかし、日本では原則として皮下注です。一部の小児科医は、DPTなどはやや深めの「筋注に近い皮下注」をしていると思います。

 しかし、何で日本だけ筋注はできないのでしょう?これには、悲しい歴史があります。

 日本でも筋注が医療施設で頻繁に行われていた時代がありました。「風邪を引いたらお尻に注射」といった感じです。その注射で、筋拘縮が起こる事件が起こりました。これが筋拘縮症です。局所的に多発したため、地域の名前を冠した病名で言われることもありました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%8B%E7%9F%AD%E7%B8%AE%E7%97%87

 ご想像のとおり、この病気は多くの場合特定の施設で、特定の薬剤で起こりました。メチロンという解熱剤が多かったです。風邪に必須の注射ではありません。筋注が悪かったのではなく、不要で危険な薬を筋注したのが悪かったのです。

 しかし筋拘縮症による訴訟が相次ぎ、「筋注=悪」というイメージが定着してしまったのかもしれません。

 桑畑メモ(注射禍の大腿四頭筋短縮症医原病について):タイトルだけで内容が予想できると思います。当時の患者さんの苦悩がわかります。
http://www.binsyodo.com/medicaldoc/kuwahata/kasahara2/chyusya.html

 筋短縮症事件:上と同じような内容です。
http://www.mi-net.org/yakugai/dacases/injection/injreduction.html

  ワクチンは皮下注で良いの?:成人のワクチンが中心ですが、各ワクチンでの考察があります。
http://www.nobuokakai.ecnet.jp/5093.html

2010年5月 6日 (木)

アタマジラミにご注意を!!

 学校や園で「お子さんにアタマジラミがありますよ」といわれてドキッとした方いませんか?「シラミ(虱)」というと、不潔だからなったんだとか、誰にうつされたんだとか、他の病気ももらってきてはないだろうか、これからいじめられないだろうか・・・こんな思いがぐるぐるしているかもしれません。でも、正しい知識があれば不用意に心配する必要はありません。

 頭に出来るシラミは「アタマジラミ」といいます。感染力が非常に強く、スクールバスのソファーでうつったということもあります。衛生状況が悪いから感染したと言うことはありません。また、シラミと言うとすごく痒くなるのではと思う人もいるかもしれませんが、無症状か「なんとなく痒い」程度のことが多いです。昔の人だと、「シラミ=チフス」と思う人もいるかもしれませんが、今の日本ではチフスになることはありません。

 そうなると、アタマジラミだからといって必要以上に神経質になることは無いでしょう。もっとおおらかに!!

 駆除の方法は、スミスリンというシャンプー(ピレスロイド系)を使うか、目の細かい櫛を使って物理的に除去する方法があります。しかし、スミスリンは最近耐性が報告されています。櫛ですく方法も、髪型によっては大変なことがあります。

 いつもながら、豊島区のアタマジラミ情報は良く出来ています(世田谷区は・・・)。
http://www.city.toshima.lg.jp/kurashi/gaichu/shirami/index.html

 国立感染症研究所で、アタマジラミの殺虫剤感受性検査を行っています。
http://www.nih.go.jp/niid/entomology/headlice/headlice.html

 個人のサイト(理髪店?)だと思うのですが、非常に良く出来ています。「頭髪衛生研究所シラミバスター」とはすごいネーミングです。上のサイトともに見てください。
http://www.s-buster.com/

2010年5月 3日 (月)

赤ちゃんの母乳性黄疸--母乳はやめないで!!

 青い(または緑色)光線を浴びている赤ちゃんを見たことはありますか?あれは新生児黄疸の治療です。新生児期に強い黄疸(間接ビリルビン)があると、それが脳に移行し核黄疸となり、赤ちゃんに頭の障害を起こすことがあります。本来人間の脳には、危険な物質が入らない仕組みがあるのですが(脳血液関門:BBB)、新生児では、まだ十分に働かないのです。間接ビリルビンという黄疸の物質が、脳の中に入ると、大脳基底核などの部位が黄色く染まります(だから核黄疸)。その結果脳神経が死滅し、脳性マヒや死亡につながります。

 そうならないために光線で直接ビリルビンを分解します。これを光線療法といいます(核黄疸になった赤ちゃんを知っています。親御さんの方針で光線療法を行わなかったのですが、その赤ちゃんは脳性マヒになりました。)。黄疸が強い場合は、血液製剤を使ったり、血液の成分を入れ替えることもあります(交換輸血)。

 母乳で育てている場合、黄疸が遷延することがあります。これは母乳の生理的な現象で、「母乳性黄疸」といいます。母乳性黄疸の原因は核黄疸を起こしたのと同じ直接ビリルビンです。しかし、血液脳関門は正期産であれば生後二週ぐらいで機能しますので、母乳性黄疸が核黄疸を引き起こすことはまずありません。生後二ヶ月くらいで、母乳性黄疸は消失します。また、「母乳性」なので母乳をやめれば黄疸は消失します。

 ただ、母乳性黄疸だから母乳をやめましょうというのは、残念です(やめるのは治療のためでしょうか?違う病気を鑑別するためでしょうか?)。母乳は人工乳よりも勝っていますし、母乳は一度やめると出なくなる人もいます。赤ちゃんにとっても母親にとっても、不要な断乳はいいことはありません。

 ただ、気をつけないといけない黄疸に、胆道閉鎖症という病気があります。肝臓で作られた黄疸成分(ここでは直接ビリルビン)は普通胆道を通って、腸に排泄され、やがてはウンチの色になります。もし何らかの胆道が詰まると、直接ビリルビンが血液に流れるので黄疸になるのです。この状態が長引けば、肝不全となって今います。母乳性黄疸で大切なことは、この胆道閉鎖症と区別することです。ただ、母乳をやめなくても区別する方法はあります。

 ひとつは、ウンチの色です。胆道閉鎖症の場合、ウンチの色の成分である直接ビリルビンが流れなくなるので、白っぽいウンチになります。ただ、色は個人差があります。ただ単に白っぽいとかクリーム色では分かりませんよね。こちらも見てください。胆道閉鎖症は早期手術が大切なので、気になったら早めに医師に相談しましょう。

http://www.city.sapporo.jp/eiken/org/health/biliary/card/card.html

 それから、間接ビリルビンが原因の黄疸の場合、母乳性黄疸よりもやや緑色っぽいですが、そう簡単に分かるものではありません。採血して間接ビリルビン・直接ビリルビンを測定すれば、すぐ分かります。

 大切な赤ちゃんのための大切な母乳です。大切に使いましょう。

http://www.e-clinician.net/vol45/no473/pdf/sp_473_16.pdf

2010年5月 2日 (日)

変わったレストラン(同時接種の不思議)

そのレストラン(レストラン日本ワクチン)の玄関には、大きな看板がありました。

  1. 当店の食事で食中毒を起こした場合、どの食事で食中毒を起こしたかわからなくなるので、食事は単品のみです。ただ、一部の食品は同時に食べてもOKです。
  2. 当店の食事を連日食べて食中毒を起こした場合も同様なので、来店間隔を6日間空けてください。

 他のレストラン(韓国ワクチン食堂やワクチンUSAカフェ)にはこういった看板はありません。みなさん、レストラン日本ワクチンに入りたいですか?

 日本のワクチンもこういったことが行われているのです。日本では長い間同時接種がタブーでした。

 同時接種で重篤な副反応が起こった場合、どちらのワクチンが原因か分からなくなるか同時接種をしない。こういったことが長年続いていました。他の国々では6種同時接種(!!)などが普通に行われているのにです。しかし、細菌性髄膜炎ワクチン(プレベナー・ヒブワクチン)や新型インフルエンザワクチンが世にでて、同時接種の議論をほとんどしないまま、特定のワクチンのみの同時接種が行われています。問題を整理してみましょう。

同時接種は厚生労働省が禁止しているのか?

厚生労働省が作成した、定期(一類疾病)の予防接種実施要領では、以下の記載があります。

18 他の予防接種との関係

(1)三価混合の経口生ポリオワクチン、乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン、乾燥弱毒生麻しんワクチン、乾燥弱毒生風しんワクチン又は、経皮接種用乾燥BCGワクチンを接種した日から別の種類の予防接種を行うまでの間隔は、27日以上置くこと。沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン、日本脳炎ワクチン又は沈降ジフテリア破傷風混合トキソイドを接種した日から別の種類の予防接種を行うまでの間隔は、6日以上置くこと。

(2)二種類以上の予防接種を同時に同一の接種対象者に対して行う同時接種(混合ワクチンを使用する場合を除く。)は、医師が特に必要と認めた場合 に行うことができること。

 つまり、(2)を読めば、「医師が特に必要と認めた場合」に同時接種は可能ということことが分かります。この(混合ワクチンを使用する場合を除く)とは、混合ワクチンの場合同時接種をしてはいけないということではなく、混合ワクチンは同時接種と数えないという意味です。

同時接種で副反応が増すのか?

 相加的に副反応が出る確率が上がりますが、それぞれ独立しています。相乗的、つまり組み合わせが悪く特別に副反応が上昇するということはありません。ワクチン後に発熱することはありますが、同時接種で発熱するというのは良くあることのようです。アメリカでは、熱さまし(タイレノール:アセトアミノフェンでカロナールなどと同じ)を同時接種後に処方することがあります。

同時接種で効果が減弱することはあるのか?

 人間の免疫能力は十分にあり、多数のワクチンに対応できます。同時接種で効果が減弱することは、日本で普通に行われているワクチンではありません。

同時接種で不具合が生じた場合、補償は大丈夫なのか

 「犯人探し」が先行するため補償を受けられない、ということはありません。日本医事新報からの抜粋です。
http://www.jmedj.co.jp/magadetail.jsp?goods_id=1646

日本医事新報(4485:83-84)
定期接種における健康被害の救済は、「疑わしきは救済する」方向で進められている。定期接種と任意接種の同時接種により、どちらが原因かの診断がつかない健康被害が生じた場合は、救済時の補償が手厚い定期接種(勧奨接種)による副反応と診断して、救済を申請するのが現実的である。なお、同時に任意接種健康被害と定期接種の健康被害は申請できない。

 自治体で行っている補償もあるので温度差はありますが、基本的には「疑わしきは救済する」です。どちらが原因か分からないから保障はしないという地域があれば、教えてください。

「同時接種」ではなく「同日接種」は可能か?

 例えば、集団接種でポリオをして、同じ日に個別接種でDPTをおこなうなどが考えられます。医学的には可能で、一部の地域では行われています。

不活化ワクチンは連日打てますか?

 免疫の機能を考えれば、生ワクチン(MRワクチン・おたふくなど)は一度接種したら他のワクチンを打つのは四週間(民法上は27日)明けたほうがいいです。不活化ワクチン(DPT、ヒブワクチンなど)は、生ワクチンと違い連日接種しても免疫上は差し支えありません。しかしながら、前述の実施要綱(沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン、日本脳炎ワクチン又は沈降ジフテリア破傷風混合トキソイドを接種した日から別の種類の予防接種を行うまでの間隔は、6日以上置くこと。)や各ワクチンの添付文書にも6日以上開けると書いてあるので、それを変えることはできません。これもおかしな日本ルールのひとつです。

同時接種が大丈夫なら、ワクチンを混ぜてもいいんじゃない?

 同時接種の難点として、一度に痛い思いをしないといけないというのがあります。アメリカなどでは、「最高でDTaP, HB, Hib, PCV7, IPV, Rotaの6種同時接種でしょうか。Rotaは経口なので5箇所、全て両大腿に1cmおきくらいに接種されました。」という例もあります。
 ひとつにまとめたほうがいいのではと思うでしょう。海外では、「ジフテリア+破傷風+(無細胞)百日咳+B型肝炎+Hib+不活化ポリオ」混合のワクチンというのもあります。肺炎球菌ワクチン(PCV)との混合は私の知る限りはありません。日本でも、DPT+IPV(不活化ワクチン)の混合ワクチンの開発がすすんでいます。
 ただ、既製のワクチンを現場で混ぜでひとつの注射でこうなうということは、外国でもしません。

 日本のワクチン行政は、アメリカだけでなく他の国々からみても20年ほど遅れているといわれています。日本のワクチン行政は北朝鮮並だなんて、言う人もいました。今はワクチンに対する意識が代わり、少しずつですが向上しています。しかし、まだ足りないところも多数あるのです。

2010年5月 1日 (土)

そろそろ麻疹の季節です

そろそろ(すでに?)麻疹流行のシーズンです。3年前(2007年)麻疹が学生の間で流行し、各大学が休校になったのは記憶に新しいところです。

 

麻疹(ましん・はしか)の特徴としては、

  1. 感染力が非常に強く、免疫が無ければまず感染する
  2. 麻疹初期には麻疹と診断できないことが多いので、周りに感染させやすい
  3. 重症度はかなり高い
  4. 合併症(脳炎・肺炎など)があると死亡率が高まる
  5. 麻疹にかかって数十年後にSSPEになる可能性がある
  6. ワクチンによって予防ができる
  7. ワクチンの効果が高くヒトにしか感染しないので、麻疹はワクチンによって根絶できる

 があげられるでしょう。ワクチンの効果が高いと書きましたが、これには限界があります。
 まず、ワクチン一回目の接種で免疫がつかない場合(PVF:primary vaccine failure)があります。ワクチンの効果は95%以上とされおり、5%弱の人がこれにあたります。
 次は、ワクチンをして免疫がついてから十数年経って、ワクチンの効果が切れてしまうことがあります。2007年の学生での流行がこれに当てはまります。これを、SVF: secondary vaccine failure と呼びます。
 これらに対応するためには、ワクチンの二度うちが必要です。海外ではごく普通に行われていたことですが、日本ではなかなか行われませんでした。

 日本でもようやく、麻疹ワクチンを麻疹・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)の二回接種が2006年から始まりました。2009年の麻疹流行は1000人以下だったということです。これもワクチンの接種率が向上したからでしょう。

 しかし、昨年の新型インフルエンザワクチンで問題が起きました。同時接種をしなかった場合、新型インフルエンザワクチンを優先させたため、MRワクチンの接種率が低下したというのです。
 麻疹はワクチン接種率が95%以上(90%?)あれば流行が抑えられるといわれています。今年はどうなるでしょうか?

 おまけ


Photo

 なんだが、麻疹じゃなくて水疱瘡(みずぼうそう)みたい。それに、ネコやネズミは麻疹にはなりません!!  

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