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2010年4月

2010年4月30日 (金)

29. 川崎病

序論が大きく変更。

I 検査項目
 追加

II 急性期治療
A 免疫グロブリン療法
 重症度にかかわらず、投与量が2g/kg点滴静注に統一された。再投与で2g/kg投与のハードルも下がっている。IL-6についての記載は削除。
B アスピリン治療
 アスピリン30mg/kg/日が30-50mg/kg/日に変更。
 「解熱しCRPが落ち着けば」が「解熱し症状が落ち着けば」に変更。
C 免疫グロブリン療法不応例への対応
 新しい項目。
 ウリナスタチン、ステロイド(パルス療法を含む)、シクロスポリン、血漿交換、インフリキシマブが追加。神奈川こどもでは、「3回目以降も可能な限り免疫グロブリン製剤の追加投与にて解熱をはかっている」ということ。

III 巨大冠動脈瘤形成時の対応
 新しい項目。各種抗血小板薬、抗凝固薬に関する表も追加。

「急性期心臓障害の出現時」および「急性期の心臓検査時期」が削除。

27. クループ症候群

 序論で、「パラインフルエンザ、アデノ、RS、インフルエンザなどのウイルス感染による喉頭気管気管支炎の頻度が高い」で「喉頭気管気管支炎」が「喉頭炎」に変更。

 そのほか大きな変更なし。

27. アナフィラキシー

II 原因
 「アレルゲンエキスの注射(減感作療法)」が「アレルゲンエキスの注射(免疫療法)」に変更。

III 症状
 「消化器症状として嘔吐、下痢、下血などがある」の「下血」が削除。

V 治療
B 中程度以上
6. ステロイド
 コハク酸ヒドロコルチゾン(ソルコーテフ)が削除。デキサメサゾンの記載が追加。
7.H2ブロッカー(ファモチジンなど)の記載が削除。
C ショック
 「リンゲル液(ラクテック、ソルラクトD、ヴィーンD、ヴィーンF、など)で急速輸液。」が「生理食塩水あるいは糖を含まないリンゲル液(ラクテック、ヴィーンF、ソルラクトなど)で急速輸液(20ml/kg 5-20分)」と変更。
 「静脈確保が困難なときは骨髄輸液、状況により繰り返す」が追加。

コメント
 昨日受講したACLS-EPを受講しました。成人アナフィラキシーのコースでは、アドレナリンの反応が悪ければアドレナリンをどんどん増量していき、ついには持続点滴にまでなりました。

26. 気管支喘息の対症療法

II 外来治療
B 治療効果の評価、反復吸入
 「ここまでの処置で改善が乏しい場合には次のCあるいはD、またはその併用にすすむ。」が追加。(注:Cは「アミノフィリン静注、点滴」、Dはステロイド薬)
C アミノフィリン静注、点滴
 変更なし。テオフィリン血中濃度の測定によるloading量の記載もあり。
D ステロイド薬
 内服のプレドニゾロン(プレドニン)の上限について記載あり(最大50mg)。
 「・・・その内服が困難な場合はデキサメサゾン(デカドロン)エレキシル0.2-0.3mg/kgを1-2回分処方し、初回分を直ちに内服する。」が「・・・あるいはデキサメサゾン(デカドロン)エレキシルまたは錠剤(粉末)0.2-0.4mg/kg(最大14mg)を2回分処方し、初回分を直ちに内服、翌日にもう一回内服する。」に変更。
E 帰宅後の治療
 抗コリン薬についての項目が削除。
(4) β2刺激薬吸入
 「・・・硫酸サルブタモールあるいは塩酸プロカテロールの吸入を十分に安定するまで3-6時間ごとに反復する」が「・・・1日数回反復する」に変更。

III 入院治療
F ステロイド剤
 「初回はプレドニゾロン(水溶性プレドニンなど)あるいはメチルプレドニゾロン(ソル・メドロール)1-2mg/kg静注」が「1-1.5mg/kg(最大50mg)静注」に変更。

IV 呼吸不全
C 人工呼吸管理
 吸入麻酔薬で、「イソフルラン」の他に「セボフルランなど」が追加。

付:急性細気管支炎
 「アドレナリン(エピネフリン)の吸入やステロイドホルモンの使用を積極的に奨める根拠は無い」が「・・・積極的に奨める根拠は無いが、最近、高容量の両者併用の可能性を示した報告がある」が追加。根拠となる文献も追加。
Plint AC, et al.: Epinephrine and dexamethasone in children with bronchiolitis. N Engl J Med 360:2079, 2009.

2010年4月23日 (金)

少しお休み

急用ができたので、しばらくお休みです。
一週間ぐらい経ったら復帰できると思いますm(_ _)m

2010年4月21日 (水)

25.未熟児・新生児急患入院時の処置

I 入院の準備
C 隔離を要する時
(1) NICU入院時
 「母体周産期麻疹より出生した児は個室隔離。」
(2) 児が正常児でない場合
 「水痘、結核、麻疹、百日咳(抗菌薬内服後5日間)の場合は母子別々に隔離。季節性インフルエンザ、風疹の場合は、母子分離せず母子を一緒に隔離。」が追加。

II 分娩立会い。
 立会いの基準:「胎児仮死」が「胎児心拍異常」に変更。「羊水過多・過少」が追加。
A 準備
 「吸引チューブは5,8,10,12Frを用意し」が「吸引チューブは10,12,14Frを用意し」に変更。用意するものに、パルスオキシメーターが追加。
B 蘇生
 図(新生児の蘇生法アルゴリズム)が追加。
C 児の評価
 「8点以上になるまで5分ごとに採点する」が追加。

III 種々の問題への対応
A 呼吸障害
(1) 呼吸窮迫症候群(RDS)
(iii) 循環不全を伴う場合、まずドパミン投与しさらに必要なら生食などを投与する記載が、まず生食投与し、あらに必要ならドパミンなどを投与すると変更。
(2) 胎便吸引症候群(MAS)
c治療
(ii) 全身管理
 「先天感染の否定ができるまではABPCを投与する」が「・・・アミノベンジルペニシリン(ビクシリン)に加え硫酸アミカシン(硫酸アミカシン)を投与する」に変更。
(6) 無呼吸発作
b 治療
 アミノフィリン(アプニション)2-6mg/kg静注後が5mg/kg静注後に変更。テオフィリン(アプネカット)の記載追加。

B チアノーゼ
診断:「95%を切るようなら検索が必要」が「生後1時間以降で95%を切るようなら・・・」に変更。
(2) 新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)
 ドパミン、ドブタミンの量が変更。ミルリノン(ミルリーラ)や過換気アルカリ療法の記載が削除。

C ショック
(2) 治療
 ヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ)5-10mg/kg静注が2-4mg/kg静注に変更。

D 低アプガールスコア
 「新生児仮死」の項目名が「低アプガールスコア」に変更。
(1)原因
 「早産児、母体薬物投与、不整脈(徐脈)、先天性神経・筋疾患」が追加。
(2) 診断
 細かな記載が追加。「低アプガールスコア=仮死ではない」と記載。
(3) 管理
 「心機能低下に関してはドミニン・・・、ドブトレックス・・・、ミリスロール。」の後に「のいずれかを投与する」が追加。

E 低酸素性虚血性脳症(HIE)
(1) 評価
表が「成熟新生児における無酸素性脳症の重症度分類(Sarnatら、1976)」から「HIEスコア(脳症の評価基準) Shankaran S,et al :N Engl J Med 353: 1574-1584, 2005)」に変更。

F 新生児けいれん
(1) 原因
 頻度の高い順に、記載が変更。細かくなった。
(2) 発作型
 「間代性発作、局所強直発作、全身性強直発作、ミオクロニー発作、スパズム、微細発作」に分類。epilepticとnon-epilepticについての記載あり。
(4) 治療
 「non-epilepticなけいれん、発作時脳波を伴わないけいれんは治療しない」が追加。

J メレナ(下血)、上部消化管出血
b 管理
 ファモチジン(ガスター)1mg/kg静注が0.5mg/kg静注に変更。

K 低血糖
(4) 治療
 大きく記載が変更。「20%の糖液静注はインスリン分泌を刺激し、血糖コントロールを不良にする」が追加。

(N ウイルス感染症)
 項目すべて削除。

O 多血症
b 症状
 「振戦、哺乳障害、黄疸」が削除「腎不全」が追加。

Q DIC
(3) 治療
 ナファモスタットメシル酸塩(フサン)0.1-0.2mg/kg/時が・・・0.06-0.2mg/kg/時に変更。「または低分子ヘパリン(フラグミン)75IU/kg/日(新生児での有効性は不明。血栓を伴うDICに用いる。AT III 依存性のためAT III 補充必要)。血小板輸血。重症例では新鮮血による交換輸血。」が追加。「AT IIIは150%を目標に大量投与する。」が削除。

コメント
 PPHNのNO吸入療法や、新生児けいれんのフェノバルビタール静注(ノーベルバール)の記載はありませんでした。
 ノーベルバールについては下をご覧ください。

http://www.nobelpharma.co.jp/works/ssjkrn_01.html

2010年4月20日 (火)

Premature thelarche: age at presentation affects clinical course but not clinical characteristics or risk to progress to precocious puberty.

J Pediatr. 2010 Mar;156(3):466-71. Epub  2009 Nov 14.

Premature thelarche: age at presentation affects clinical course but not clinical characteristics or risk to progress to precocious puberty.

http://www.jpeds.com/article/S0022-3476%2809%2900986-X/abstract

目的:早発乳房(premature thelarche:PT)の発症年齢が、臨床的特徴、経過および思春期早発症(premature puerty:PP)に進行するリスクなどに影響するかどうかを究明する。
研究デザイン:成長と思春期に関するデータは、1995年から2005年にかけてフォローアップした139人のPT患者の医療ファイルから検索した。解析は、PTを発症した年齢(出生、1-24ヶ月および2-8才)をもとに行われた。経過は、退行性・持続性・進行性および周期性に分類された。
結果:診断時に、身長標準偏差スコア・骨年齢-暦年齢比およびホルモン値などを三つの年齢グループで比べた。退行性が50.8%、持続性が36.3%、進行が3.2%おおび周期性が9.7%だった。進行性および周期性の発症率は、出生時発症のグループ(13%)や1-24ヶ月のグループ(3.8%)と比べて、2歳以上のグループで有意に高かった(52.6%: P<0.01)。思春期早発症は早発乳房の発症年齢や経過にかかわりなく、13%で発症した。
結果:診察時の臨床的および身体側底の結果と思春期早発症になるリスクは、発症年齢にかかわらず、すべての早発乳房の女性でよく似ていた。発症時思春期早発症に進行するリスクを予測できる臨床的および検査テストは、現在のところ存在しない。

 出生時発症を含む早発乳房女児の この大規模な研究では、発症年齢にかかわらず診断時の臨床的および身体側底の特徴と思春期早発症のリスクは、すべての女性で同じだった。多くの(85%)早発乳房の患者は2歳前に発症し、そのほとんど半分が出生時発症だった。この早発乳房の年齢分布は、私たちの施設で25年前に行った結果と非常に似ている。年代を超えたこの一致は、これまでに起こったかもしれない栄養や環境の変化は、早発乳房の病態生理に主要な役割を演じてなかったということを示している。
  新生児の(胸部の)触診可能な組織の存在は明らかに一般的な生理的現象であり、それは子宮内や母乳で、母親のホルモンに暴露されたのと関連があると信じられている。Schmidtらは、三ヶ月の女児の84.8%に触診可能な胸の組織があり、それは内因性エストラジオールの血中レベルと関係するが体重や皮下脂肪組織の量とは関係ないと報告した。この点において、われわれは出生時に存在した胸の組織が残っていた女児を観察していただけかもしれず、ほかの女児では組織が消えてしまったために単に参照しなかったのでないという可能性がある。特に興味があることに、われわれの知見では、乳房の発芽してから診察の間隔が、出生時に早発乳房をきたしたグループでは有意に長かった。出生時に乳房の発芽があるにもかかわらず、医療的助言はかなり遅かったと思われる。この診察の遅れは、多くのケースで起きている退行を除外しているかもしれない。

・・・・

 この結果では、大豆の摂取やエストロゲンの血中濃度上昇や副腎アンドロゲン上昇や未熟性やSGAとも、早発乳房との関連がなかったということです。

 

2010年4月19日 (月)

24.糖尿病性ケトアシドーシス

I 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)とは
 病態生理の項目が追加。図も追加。

II 評価項目
 「DKAでは、臨床観察、検査結果の頻回かつ継時的な評価が必要不可欠である」が追加。
(3) 心電図モニター
 血清カリウムに関する記載あり。

III 治療
 「治療の目標は、脱水、ケトアシドーシス、高血糖を、脳浮腫などの合併症を生じさせることなく是正することである」がついか。

B インスリン療法
(1) 初期治療
 「one shot静注は行わない」が「one shot静注は原則として行わない」に強調文字に変更。
 インスリンポンプ(CSII)についての記載が追加。

D 合併症。
(1) 脳浮腫
 細かく変更あり。マンニトールを20分で投与が20分以上でかかて点滴静注など。
(2) 膵炎・横紋筋融解
 細かな解説が追加。

付:原因不明の低血糖を診察する場合の注意
 検査すべき項目で、遊離脂肪酸(FFA、NEFA)が追加。

23.急性副腎不全

序論で
 「・・・ストレス時には、通常の3倍程度のステロイドを内服するように指導している」が「・・・ストレス時には通常の3倍程度のステロイド薬を内服し、それが困難な場合には経静脈的なステロイド薬投与を必ず受けるように指導している」に変更。
 「生理量のステロイドとは、幼児以降ではヒドロコルチゾン換算で10-15mg/m2/日程度と考えられる。」が追加。

II 薬物療法
A 脱水、塩喪失所見のある場合
(2) 輸液
 「しかし、副腎不全の際は水中毒になりやすいので過剰にならないように急激な補正は避ける」が「副腎不全の際は水中毒になりやすいので、必ず24時間以上をかけて補正するように計画する。」に変更。

III マス・スクリーニング発見の新生児21-水酸化酵素欠損症
 一部記載変更あり。
 「経口用ヒドロコルチゾン(コートリル)100-200mg/m2/日」が「コートリル20-100mg/m2/日」に変更。

IV 急性副腎不全発祥の予防措置
 記載に変更あり。


22.急性腎不全

I 原因と鑑別
 「はじめから循環血液量の増加がある場合は、輸液負荷はかけない」が追加。

II 腎不全時の諸変化に対する処置
M 浮腫の項が削除。

III 腹膜潅流
B CAPD
 自動腹膜潅流装置のPAC-Xサイクラーが削除。

21.低酸素発作、プロスタグランディン療法

I 低酸素発作
F 昇圧剤と交感神経β遮断薬の投与
 塩酸メトキサミン(メキサン)が削除

20.心不全、不整脈

I 心不全
 明らかな変更点確認できず。

II 不整脈
 題名が「頻脈性不整脈」から「不整脈に変更」
A 不整脈時の初期対応
 「(1)循環不全の有無」「(2)基礎疾患の確認」が削除。「(1)診察」に変更。

B 頻拍停止を目的とした治療
 「頻脈は乳児>220BPM、乳児以降>180BPMと定義する」などが追加。治療項目を

  1. 上室性頻拍
  2. 心室頻拍

から

  1. Narrow QRS頻拍+強い循環不全
  2. Narrow QRS頻拍+軽度の循環不全
  3. Wide QRS頻拍+強い循環不全
  4. Wide QRS頻拍+軽度の循環不全
  5. 心室細動

 に変更。WPW症候群に関する記載が削除

19.免疫グロブリン製剤

 明らかな変更点確認できず。

18.手術部位感染症の予防的抗菌薬

 明らかな変更点確認できず。

17.化膿性関節炎・化膿性骨髄炎

I 化膿性関節炎
A 病態生理
 「このような化膿性関節炎は特に乳児期に多い」が「このような化膿性関節炎は特に乳児期に多く、大腿骨近位では”乳児可能性股関節炎”として知られている。

 「穿刺で膿が検出されれば培養検査に検出し、早期手術の適応について検討する」が「穿刺で膿が検出されれば、塗抹検査(グラム染色)と培養検査に提出する一方、早期手術の適応について検討する」に変更。

B 早期治療
 「近年MRSAの頻度も高い」が追加。
処方例
1) 初期(起炎菌判明前)
 「セファゾリンα(セファメジンα)40-50mg/kgを2-3回分割で静注」を「75mg/kg/日を3回分割で静注」に変更。「またはセフトリアキソン(ロセフィン)100mg/kg/日を2回分割で静注」が追加
 「アンピシリンナトリウム(注射ビクシリン)一日1-2gを静注」が「アンピシリン・スルバクタムナトリウム(注射用ユナシンS)150mg/kg/日を4回分割で静注。」に変更。
 「近年MRSA感染も頻度が高いので、早期にカルバペネム系を第1選択とする、という考え方もある。MRSAが判明すればバンコマイシン等の使用も考慮する」が「MRSA感染が疑わしいときはバンコマイシン等の使用を検討する。塩酸バンコマイシン40mg/kg/日、4回分割60分で点静」に変更。

2010年4月18日 (日)

百日咳についてその2――大人の百日咳

昨日の続きです。

 近年、成人の百日咳が問題になっています。DTPの成果で乳幼児での発症が抑えられてきた百日咳ですが、成人になるとその効力が薄れてきます。その結果、大人になってから百日咳にかかる人が増えてきました(百日咳は終生免疫ではなく一度感染しても再感染することもありますので、百日咳流行の原因はワクチンだけではありません)。学生が医学部で集団感染ということもありました。例外がありますが、成人の百日咳は概して軽症です。そのため診断が難しく、ほかの人に感染させるということもあります。

 もし、感染先が自らの赤ちゃんだったらどうしましょう?赤ちゃんの百日咳は命にかかわります。

 母親からの移行抗体(お母さんが百日咳に感染していると、胎盤を通して赤ちゃんに免疫ができる)があるのでは、という意見がありますが、それが確実ではないのです。移行抗体を確実にしたいというなら、母親は妊娠直前に百日咳に罹り、なおかつ抗生剤を飲んではいけないということになります。

 日本ではDPT(DTaP)は生後90ヶ月までとなっていますが、海外では成人用のDPTワクチンが出ています。TdapまたはdTapと呼ばれています。dとpが小文字なのは、DTaPよりもジフテリアと百日咳の成分が少ないからです。
 日本で行われているDPTワクチンも、通常量0.5mlのところ0.2mlを成人に打ったところ、効果があり安全性も確認できたということです。
http://www.jpeds.or.jp/journal/114-03.html#114030485

 

スティーブ・ジョブズの感動スピーチ

 ふとしたところで、Apple CEOであるスティーブ・ジョブスのスタンフォード大学卒業式での講演を聴くことができました。

 生い立ちや健康問題、自ら創ったApple社を首になったりと、波乱万丈の人生です。講演後ですが、ジョブスは肝臓移植を受けました。それでも彼を動かすものは何でしょう?ぜひともお読みください。自らの糧としたいです。

http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html

 上のウェブで動画が見れないときは、こちらも(日本語訳付です)。

2010年4月17日 (土)

百日咳についてその1――こんなに悲しい数字があるんだ

 通常生後3ヶ月になってから打つワクチンのひとつに、DPTというのがあります。最初から、ジフテリア(diphtheria)・百日咳(pertussis)・破傷風(tetanus)の英語での頭文字からとったものです。海外では、DTPとも表現され、百日咳の成分が全細胞(whole)の場合はDTwPで、後述する無細胞または非細胞(acellular)の場合はDTaPと区別しています。もともとDPTワクチンはDTwPワクチンだけでしたので、日本でもこのワクチンで接種が行われていました。

 しかし、1974年にDPTワクチンで2名の死亡事故が発生し、ほかにも有害事象が報告されました。マスコミなどによる反ワクチンキャンペーンが始まりました。1975年にはDPTのワクチンは中止になりました。3ヶ月後接種年齢は比較的安全とされる2歳以上から再開されましたが、接種率は低いままでした。

 ただ、百日咳菌が根絶されたわけではないので、結果として多くの赤ちゃんやこども達が感染することとなりました。典型的な百日咳以外は診断するのは難しく統計により幅がありますが、感染者は1万人から3万人ともいわれ、死亡者数は20から113人とも言われています。1981年から改良されたDTaPワクチンとなりました。

 もちろん、ワクチンの副反応(有害事象)による被害者数と、ワクチンをしなかったことによる被害者数とは、簡単に比べられるものではありません。しかし当時のマスコミは、ワクチンによる死亡と、それをしなかったことによる死亡の扱いはあまりにも違いすぎました。

 これは、麻疹についてのマスコミの発言です。

我々には麻疹で何人亡くなるかということは関係ない、むしろそのワクチンで何人亡くなるかということの方が問題だ

 私などは、これを初めて読んだときに血圧が上がりましたが、日赤医療センターの薗部先生は違いました。詳しくは、こちらを見てください。

 なお、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、副題の「こんなに悲しい数字があるんだ」は、中西準子氏の「こんなに悲しいグラフがあるんだ-DDTについて考える-」からのオマージュです。

 大人の百日咳の話は、またあとで・・・

 

追伸:薗部先生・中西先生のお名前を間違えてしまいました。訂正してお詫びいたします(2012/05/30)。

2010年4月16日 (金)

16.各種感染症における抗菌薬の選択

使用薬剤が、菌種によりかなり変更されている

I 原因別薬剤選択
主なもののみ記載
ブドウ球菌
 今までブドウ球菌とMRSAに分かれていたのが、ブドウ球菌(MSSA)、MRSA、CNSの三つに変更。
ブドウ球菌(MSSA) FMOX, CFDN, CDTRが削除。CEX追加。IPMがIPM/CSに変更。
MRSA 「・・・とFOM、CMZの併用」が削除。ST追加。
BLNAS、BLPAR、BLNARについて追加
レンサ球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌で、AMPC追加
Pc高度耐性肺炎球菌でCFPN削除。PAPMがPAPM/BPに変更。
インフルエンザ桿菌 CFIX等の経口セフェム剤が、CFIXのみに変更。重症感染症でのAZTが削除。

II 頻度の高い小児感染症の薬剤選択(起炎菌検出前)
感染症に百日咳が追加。
尿路感染症の腎盂腎炎の第1選択でSBT/ABPCが追加。
肝膿瘍の第一選択で、IPM/CS、MEPMが追加。
骨髄炎の第一選択で、CEZ+CLDM、CTX、CTRX、SBT/ABPC追加
敗血症性関節炎でCTX、CTRX追加
重症壊死性軟部組織感染症の第一選択がCTX+CLDM+MINOからCTX、CTRX+CLDMに変更。

III 重症感染症初期治療における抗菌剤選択と投与方法
A 細菌性(化膿性)髄膜炎
1) 菌検出前
1-3ヶ月未満 CTX 200mg/kg/日がCTX200-(300)mg/kg/日に変更。
3ヶ月以上で、PAPM120mg/kg/日がPAPM100-(160)mg/kg/日に変更。
2)インフルエンザ桿菌
「ABPC感受性なら・・・分4-6静注」が「分4静注」に変更。
5)B群溶連球菌
 「CTX併用」が「CTX、またはCTRX併用。14-21日」に変更。
6)大腸菌など
 「21日」が追加。

「治療期間は、菌消失後で全身状態の改善、髄糖液の正常化、炎症反応陰性を確認後、1週間程度継続するのが基本である」

B 感染性心内膜炎
 詳細は割愛。

C 敗血症
 具体的な投与量について言及。好中球減少患児に、MEMPの追加あり。
 免疫グロブリンの投与について「特に毒素性ショック症候群、重症肺炎球菌感染症・インフルエンザ桿菌感染症など」と解説追加。

D 血液腫瘍患者の発熱
8)アミノグリコシド、VCM、TEICの投与法
 アミノグリコシドとピーク値およびTEICのトラフ値の記載あり。

コメント
 いい抗生剤も出てきていますが、耐性化も進んでいます。抗生剤は慎重に使ったほうがいいですね。カンピロバクターにクラリスロマイシンはもう効かないのでしょうか?
 ヒブワクチンや乳児の肺炎球菌ワクチンが普及すれば、抗生剤の使い方も変わってくるかもしれません。

15.oncologic emergencies

I 腫瘍による圧迫
A 上大静脈症候群
 「気導圧迫による生命の危険の恐れがある場合は、緊急放射線照射の適応となる」が「気導圧迫による生命の危険の恐れがある場合でも、ステロイド製剤の使用なしに緊急放射線照射をすることは推奨されないが、救命優先の場合は適応となる」に変更。

II 腫瘍溶解症候群
A 予防
(1) 輸液、尿アルカリ化
 後半にかなり追加事項あり。
(2) アロプリノール(ザイロリック)
 細かな記載に変更。

14.輸血

序論が一部変更

 表1:血液および血液製剤の選択で、血友病Aの第一次選択が「第VII因子製剤」となっているが、インヒビターでもない限り第1選択薬は「第VIII因子製剤」ではないだろうか?
 表の注釈で、「人濃厚赤血球、濃厚血小板はすべて白血球除去製剤(leukocytes reduced: LR)」と記載追加。

IV 輸血中の注意
 記載がより細かくなっている。輸血初期の観察について言及。

V 輸血副作用
C 感染
 「日赤血は初流血除去が導入され、安全性が高まったが、・・・」が追加。

VI 血小板輸血
 「血小板減少は慢性に経過することが多く、5000/μL以上で出血症状が軽微な場合には適応にはならない。」

VII 輸血後GVHDの予防
 「白血球除去だけでは発症する危険性があることに留意する必要がある。」と追加。

IX 危機的出血への対応ガイドライン
 緊急時のABO異型適合血について記載。

13.高カロリー輸液

I 適応
 変更あり。「経口摂取が不可能な場合でも、腸管が使えれば可能な限り経腸栄養を選択すべきで、静脈栄養の適応は限られる。」と追加。

III 中心静脈高カロリー輸液
A 中心静脈カテーテルの挿入
 手技について変更あり。
B 輸液組成と投与量
 神奈川子どもでは、現在院内約束処方で行っているということ。よって、施設によっては、以下の既述は参考にならない可能性あり(成書を読みましょう)。
(3) ビタミン
 「市販の成分内容を確認し、ビタミン組成に抜けが無いように注意する。」が削除。
(4)微量元素
 亜鉛およびマンガンの淡蒼球沈着の記述が削除。セレンのみの記載となる。

C 中心静脈栄養施行中の管理
5.「ほかに熱源がなく、24時間経過して解熱しなければ再度血液培養とカテーテルから採血して培養する。」が「ほかに熱源がなく、24時間観察して解熱しなければカテーテル関連血流感染症(CRBSI)と考える。ヘパリンロックすると解熱することも診断の一助になる。」に変更。
6.ブロビアックカテーテルとヒックマンカテーテルについての記載追加。
7.血栓によるカテーテル閉塞について変更あり。
 そのほか、微量元素、ビタミン、電解質についての記載が削除。

IV 末梢静脈高カロリー輸液
 「院内約束処方を利用すると便利で処方ミスが減らせる」と追加。

V 在宅静脈栄養法(HPN)
 「ブロビアックカテーテルあるいは皮下埋め込み型の中心静脈ポートを留置し、HPN用携帯型ポンプを使用する」が追加。「脂肪投与の問題」「トラブル対応」が追加。

12.輸液

II 脱水症の輸液
A 乳児下痢症の輸液
(1) 輸液の実際
 軽症の場合で、OS-1が追加。希釈乳が削除。「1回量50-100mlを2-3時間ごとに与えて経過をみる」が「1回量5-10mlを頻回に与えて経過をみる」に変更。
a I期の輸液(0-2時間)
 「・・・輸液はカリウムを含まず乳酸ソーダを含む細胞外液型電解質溶液(ソリタ-T1号またはソルデム1など)・・・」が「・・・輸液はKを含まい細胞外液型電解質溶液(ソリタ-T1号、ソルデム1、生理食塩水、ビカーボン注など)・・・」に変更。

III 電解質異常に対する輸液
D 低カルシウム血症
Caの静脈投与による注意点
4.混注により沈殿形成で、「炭酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸の塩類とは配合禁忌」から「炭酸、クエン酸、シュウ酸、リン酸、硫酸、酒石酸、セフトリアキソンナトリウムの塩類とは配合禁忌」に変更。

コメント
 初期経口補液で、OS-1の記載が出ました。希釈乳は削除になりました。輸液後の「経口摂取開始の目安」にはまだ「・・・下痢便の排出が見られなくなったら、経口摂取を開始する」「・・・下痢の悪化がなければ希釈した普通ミルク(7%)を1回20-30mLで開始する。」と記載があります。次回改定ではどうなりますかね?
 セフトリアキソン(ロセフィン)とカルシウムについては、数年前中国で問題になりました。 

11.児童虐待・ネグレクト

序論が、追加・変更あり。
III 分類
E 重要な病型
(1)題名が 「Shaken baby syndrome(SBS) / shaken impact syndrome(SIS)」から「AHT (abusive head trauma) / SBS (shaken baby syndrome)」に変更。説明にも変更あり。「鈍的外傷や二次的な低酸素症も脳傷害に関与することから、アメリカ小児科学会はSBSよりAHTを用語として使用することを推奨している」が追加。

IV ”不自然さ”が手がかり:子どもの様子、親の様子、親子関係
A 病歴
「病状に無関心」が「病状に無関心(質問が少ない)」に変更。

VI 検査
A AHT/SBS
 頭部CT、頭部MRIのみならず、頭部USや脊髄MRIも追加。
B 全身骨X線撮影
 「頭部外傷の際、頭部X線は4方向、肋骨骨折が疑われるときは胸部X線で斜位も考慮する」が追加。
E 先天性代謝異常スクリーニング
 タンデムマススクリーニング(ガスリー濾紙血)が追加。

VIII AHT/SBSの予防
 新しく追加となった。ポイントは

  1. 泣いたらまずなだめる。
  2. それでも泣きやまないときはその場を離れて気分転換
  3. 絶対に揺さぶらない

 そのほか、参考文献にも追加あり。

10.気管切開の管理と急患対応

 序論で、「緊急対応の後に、期間内視鏡をはじめとした耳鼻科的診療を手配することが重要である。」が「緊急対応の後に、期間内視鏡をはじめとした精査を手配することは重要である。」に変更。

IV 気管切開孔周囲の肉芽
 日常の処置に変更あり。

IV カニューレ交換
D カニューレ交換
 「気管切開孔周囲を局所洗浄してから」が追加。

9.誤飲・誤嚥

序論で「誤飲・誤嚥の瞬間が目撃されることは少ないので、疑われなければ治療が遅れることもある」が追加。

I 気道異物
B 治療上のポイントとpitfall
 「不用意な刺激で泣かさない!」が追加。
 「補足:気管支ファイバースコピーvs硬性気管支鏡」の項が削除

II 消化管異物
B 治療上のポイントとpitfall
2.「ボタン電池は、放置すると放電し粘膜損傷を起こす可能性があり、・・・」が「ボタン電池は、特にリチウム電池は起電力が高く、放置すると放電し粘膜損傷を起こす可能性があり、・・・」に変更。
4.「手技中の呼吸不全や、摘除物が咽頭部に引っかかることがあるので、全身麻酔下にて行うことを躊躇しない」が追加。
C 腐蝕性物質の誤飲
 「盲目的な胃チューブ挿入は危険である」が「嘔吐が誘発されるような盲目的な胃チューブ挿入は危険である」に変更。

IV 灯油誤飲(灯油肺炎: kerosene pneumonia)
A 臨床上の注意点
2.「初診時に元気でも」が太字に変更

8.心筋炎、心原性ショック

III 治療
C 心筋炎特異的治療
(2) 免疫抑制剤:class-IIb
「ウイルス活動期にあたる発症後5日前後でのステロイド投与は避けるべきである」が追加

D 補助循環
 「急性期の低血圧、心原性ショック、重度不整脈を認めた場合、速やかに補助循環を導入する」が「急性期の低血圧、中程度異常の僧帽弁逆流合併例、心原性ショック、重度不整脈を認めた場合、速やかに補助循環を導入する」

F 診断のための検査
 「トロポニン定性試験では偽陽性例も見られることもがあり、トロポニンの定量も同時に行う必要がある」が追加。心筋生検にも言及。
 「機械的補助循環の病態および適応」「機械的補助循環の適応外となる病態」「低心拍出量症候群LOSを疑わせる所見」が表に移行。

心原性ショック
II 1回心拍出量の低下に対して
 ・PDFIII阻害薬
 ミルリノン(ミルリーラ)の、max. 0.2μg/kg/minがmax. 0.57μg/kg/分
 オルプリノン(コアテック)のmax. 0.2μg/kg/minがmax 0.4μg/kg/分

III 頻脈に対して
 「必ず心電図同期の元に行うこと」に下線。
 アミオダロン(アンカロン)について詳しく既述あり。

V 補助循環
 大幅に加筆あり。

 


2010年4月15日 (木)

サーバリックス?ガーダシル?

 子宮頸がんワクチン(HPVワクチンといったほうが正確かな?)の報道が過熱しています。HPVワクチン(サーバリックス)を小学校で集団接種しようという声もあります。

 しかし、ちょっと待ってください。世界標準でいきましょう!!アメリカのいうとおりにしましょうとは言いませんが、おかしな日本ルールを遵守するよりかはましです。

 世界的には、サーバリックス(HPV-16,18に対応)のほかにもガーダシル(HPV-6,11,16,18に対応)というHPVワクチンがあります。日本ではまだ認可しないガーダシルですが、こちらのほうがカバーしているHPVのタイプが多く、コンジローマにも対応してます。子宮頸がんはおもにHPV-16,18が原因ですが、コンジローマはHPV-6,11が原因です。

 現時点で、小学生にサーバリックスを接種すると言うことは、彼女達にガーダシルという選択を捨てさせることになります。

 それから、子宮頸がんの予防はワクチンだけで済むものではありません。一次予防はワクチンですが、二次予防は質の高い子宮頸がん健診です。日本では子宮頸がんの健診率が低く、精度も高いとはいえません。HPVワクチンばかり報道されていますが、検診の充実も大切でしょう。

 もともとの感染源である男性の対応も考えなければなりません。子宮頸がんの原因になるHPV(HPV-16,18)は多くの場合男性には無症状です。女性の場合、性行為感染症(STD:Sexually Transmitted Diseases)になりえますが、男性の場合は多くの場合症状が無いので性行為感染(STI:Sexually Transmitted Infection)でとどまります。

 男性のもHPVワクチンを接種すれば感染源が減るので、女性の子宮頸がんも減るとは思います。しかし、STIでとどまる男性にもサーバリックスを打つメリットはどこにあるのか議論になります。男性でも発症するコンジローマにも対応したガーダシルは、男性に接種する根拠があります。

 似たような状況の感染症に、風疹があります。もともと先天性風疹症候群を予防するため女子中学生に風疹ワクチンを接種していました。しかし、妊娠中にパートナーが風疹に罹患し、(濃厚接触のため、ワクチンを過去にしても)妊婦が風疹に罹患して胎児が先天性風疹症候群になるというケースが出てきました。そのため、男性にも風疹ワクチンを打つようになったのです。今では、麻疹ワクチンと一緒になったMRワクチンとして、二回接種するようになっています。

 余談ですが、成人になってからの風疹は、かなりきついものですよ(経験上)。

7.ショック

II 分類、病態、原因、症状
「より治療法の選択に直結する、ショックの新しい病態別分類を表2に示す。なお、小児のショックの特徴は以下のとおりである」が追加。

IV中心静脈圧測定
A 中心静脈カテーテル挿入
「新生児では原則として静脈切開」が「カテーテルの改良とエコーの使用により、新生児でも穿刺が可能である」に変更。そのほかカテーテルについての細かな記載あり。

VII ショック時によく使用される薬剤
B フォスフォジエステラーゼIII阻害薬
記載変更、オルプリノン(コアテック)についても記載あり。

VIII 敗血性ショックの取扱い
ガイドライン(surviving sepsis campaign guidelines)が2004年度から2008年度に変更。図も一部変更あり。

アナフィラキシーショックの治療は削除

コメント:ショックの治療は乳酸リンゲル液かソリタ-T1号と書いてありますが、敗血性ショックのガイドラインには生理食塩水もしくはコロイド液となっています。ここら辺は、議論のあるところです。

6.急性脳炎、脳症

I 定義
A 急性脳炎
 記述に変更あり。
 「ウイルス直接浸潤によるものよりも炎症に引き続く宿主の(過剰な)免疫反応が病態の主体となる場合も多いと考えられるため、治療は急性脳症に準じる。単純ヘルペス脳炎が否定できない間は、抗ウイルス薬を投与する」が追加。
B 急性脳症
 大幅に変更あり。まず(1)発熱に続発して起こるものと(2)発熱・けいれん後数日して意識障害が憎悪するものに区分。二相性けいれんについても言及あり。

II 初期診察
A 神経症状
 意識障害の評価で、JCSだけではなくGCSの記載あり。「異常行動/言動の有無(意識の変容)などを評価する」「意識障害の遷延、麻痺(Todd麻痺は通常24時間以内に回復)、異常筋緊張(関節を動かし固縮の有無をチェックする)、不随意運動の出現などは脳炎・脳症に比較的多く見られる症状である」が追加。

III 検査
B 髄液所見
 NSE, MBP, IL-6について記載追加。髄液所見の表で、脳症の項目が追加。

C 画像検査
 ”可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎・脳症”についての記載あり。

D 脳波検査
 「睡眠時のみでなく疼痛刺激等への脳波上の変化も記載する」が追加。

IV 治療
 序論が大幅に変更あり。脳浮腫のみだけではなく、脳細胞保護を強調している。
A 急性脳炎の治療
(2) それ以外の脳炎・脳症
 急性脳症の治療に準じると記載あり。
B急性脳症の治療
 「インフルエンザ脳症ガイドライン2009年9月改訂版が参考になる」と記載あり。
(1) 初期治療
b 十分な酸素投与と適切な気道確保
 リドカインの使用について「喉頭展開時の急激な脳圧の上昇を防止するため」と追加。
d 神経症状のコントロール
 「高浸透圧利尿剤(マンニトール・・・)を使用する」がマンニトールの記載が消え、「高浸透圧利尿剤を使用する(p.35「5意識障害」参照)」に変更。
e 血液凝固異常の是正
 「重症の急性脳症においては、高率に血液凝固異常を合併する」が「重症の急性脳症においては、炎症性サイトカインなどを介した血管内皮細胞の活性化により高率に凝固異常を合併する」に変更。
(ii) プロテアーゼ阻害薬
 「血管内皮に付着した白血球から放出される蛋白分解酵素阻害による内皮保護」が追加。

(2) 特異的治療(薬剤)
e フリーラジカル消去薬(エダラボン)について記載あり。

(3) 特異的治療(治療法)
a 脳低体温療法
(v) 鎮静薬
3.「脳波上、発作波の残存する場合は、ミダゾラムをペントバルビタール(2-4mg/kg/h)に変更する」が「脳波上発作波の残存する場合は、ミダゾラムを(2-4mg/kg/時)に変更する」と変更あり。これは印刷ミスか?本当なのか?

5.意識障害

I 全身管理
2.静脈確保で「脳浮腫の危険があるため輸液は控えめにし、40-60ml/kg/日を目安とする」が「脳浮腫の危険があるため輸液は控えめにし、60-80mL/kg/日を目安とする」に変更。

III 原因の検索
C 検査
1.血液で「血清、血漿、質量分析用ガスリー血保存」が追加。
2.尿で「残りの検体は保存する」が「残りの検体は有機酸検査等のため保存する」に追加。

IV 治療
A 脳浮腫のコントロール
(1) 高体温の回避
「また高体温は、神経細胞毒性を助長するため平温を目指す」が追加
(5) 過換気を避ける
 「PaCO2は25-30mmHgと低めに保つ」が、「・・・他の方法で脳圧維持が困難なときPaCO2を30-35mmHgの軽度過換気を行う」に変更。
 他、「鎮痛、鎮静」の項目が追加、アセタゾラミド(ダイアモックス)の項目が削除。「進行例への対処」が追加。
B 抗ウイルス薬
(1) 抗ヘルペス薬
 「抗体価上昇あれば」が「抗体価上昇もしくはウイルスゲノムの検出があれば」に変更。
D 基礎疾患に対する治療
(5) 先天性代謝異常による代謝性アシドーシスおよび先天性高乳酸血症による代謝アシドーシス
 内容が変更されている。治療はL-カルニチン(20-40mg/kg/日)が(30-50mg/kg/日)に変更。

V 鑑別すべきもの
A 中毒
 殺鼠剤が削除。ぎんなんが追加。
C 代謝性昏睡
 「高アンモニア血症」、「いわゆる急性脳症、Reye症候群など」、「消化不良性中毒症、疫痢」が削除。「尿素サイクル異常症」、「有機酸代謝異常症」、「Wernicke脳症」が追加。「脳炎、髄膜炎」が「脳炎、髄膜炎、急性脳症」に変更。

4.けいれん

I 鑑別すべきもの
 「但し、てんかん児に対し、発作を軽減する目的のためにジアゼパム座薬を使用する場合がある」が削除。
 「並行して原因疾患の鑑別を行う・・・できれば点滴ライン確保時に、血糖、Ca、Mg、Naを含む採血も行う。・・・低ナトリウムの急激な補正は行わない・・・。」が追加。

II けいれん重積状態の治療
C ミダゾラムでけいれんが抑制できない場合
 ペントバルビタールの項が削除。
 チオペンタールとチアミラールの「3~5mg/kgをゆっくり静注。必要ならば2~5mg/kg/h維持静注」が「2~5mg/kgをゆっくり静注。必要ならば1~5mg/kg/h維持静注」に変更。
D 注意事項
 大幅に変更・加筆あり。ミダゾラムの離脱症候群について記載あり。フェニトインのフラッシュについて「生理食塩水」から「生理食塩水ないし注射用蒸留水」に変更。チオペンタールとチアミラールの注意事項追加。軽症胃腸炎関連けいれんについては、変更なし(治療期間の記載なし)。熱過敏性てんかんの解熱の必要性について言及。

IV 抗けいれん作用のある坐薬と投与量
 B フェノバルビタール座薬で「てんかんの診断がついた場合は適切な抗けいれん薬の内服に切り替えていく」が追加。
 C 抱水クロラール座薬が削除

コメント:ジアゼパム注腸について。

 ダイアップとは違い、注射薬を直接注腸します。数mlの蒸留水を加えて(生食だと析出します)で入れることもあります。小児科当直医マニュアルの量では0.5mg/kgですが、海外では1-2mg/kgという記載もあります。

3.急性呼吸不全

「呼吸障害」という単語が「呼吸窮迫」に変更している。

II 「呼吸不全のボーダーライン(呼吸困難から呼吸不全へ進行のモニター)」の題名が、「呼吸窮迫から呼吸不全への進行(SpO2モニターを過信しない)」に変更。内容も大きく変わっている。
III 呼吸窮迫/呼吸不全の治療のC 気管挿管の内容が一部変わっている。挿管の適応が「呼吸不全」から「呼吸不全、もしくはそれに近いとき」に変更。
IV 急性肺傷害とARDSの診断基準で、Lung injury scoreが削除。

2.蘇生

序論で「不測の事態に備え、定期的にトレーニングしておく必要がある」が追加。
Ⅰ一次救命処置
A Step1(刺激と反応の確認)で、「優しく刺激を与え」が「肩をたたくなどの刺激を与え」に変更。
D Step4(初期換気)で、「ゆっくり(1~1.5秒かけて)」と二回人工呼吸を行う」が「ゆっくり(1秒かけて)」と二回人工呼吸を行う」に変更。
E Step5(人工呼吸と峡部圧迫)で、「つまり、”強く押す”、”早く押す”、”胸壁の戻りを確実にする”」が「つまり、”強く押す”、”早く押す”、”絶え間なく押す”、”胸壁の戻りを確実にする”」に変更。
表「蘇生後の全身管理」が大幅に変更。中枢神経と臨床検査の項が追加。

 他、薬剤について、商品名およびアンプル量が記載されるようになり、使いやすくなった。

1.小児救急トリアージ

 今回新しく設けられた章です。第一番目に載せることに、神奈川こどもの意気込みが感じられます。PALSの患者評価を基準にしているようです。

小児科当直医マニュアル

 神奈川県立こども医療センターで作っている「小児科当直医マニュアル」は小児科医たちのバイブルといっても過言ではないでしょう。この本を忘れて当直をすると、路頭に迷うこともしばしばです。

 1975年が第一版です。毎年3年おきに改定され、そのたびに内容が濃く、ページ数も厚くなっていきます。今年になって改定12版になりました。ページ数は472で厚みは2cmです。前回よりも17ページ多くなりました。

 数年前ですが、ある小児科医の先生が小児科当直医マニュアルを前の版と比較していたウェブを開いていました。今はもうありませんが、小児救急医療の変遷を感じ取ることができ、当時非常に勉強になりました。時間があれば、私も比較をしてみようかと思います。

http://www.shindan.co.jp/shindan/tosyo/Sai.php?id=891

目  次

■ 1 小児救急トリアージ  
■ 2 蘇 生  
■ 3 急性呼吸不全  
■ 4 けいれん
■ 5 意識障害  
■ 6 急性脳炎・脳症  
■ 7 ショック  
■ 8 心筋炎,心原性ショック  
■ 9 誤飲・誤嚥  
■ 10 気管切開の管理と急患対応
■ 11 児童虐待・ネグレクト  
■ 12 輸 液  
■ 13 高カロリー輸液  
■ 14 輸 血  
■ 15 oncologic emergencies
■ 16 各種感染症における抗菌薬の選択 
■ 17 化膿性関節炎,化膿性骨髄炎
■ 18 手術部位感染症の予防的抗菌薬
■ 19 免疫グロブリン製剤
■ 20 心不全,不整脈  
■ 21 低酸素発作,プロスタグランディン療法  
■ 22 急性腎不全  
■ 23 急性副腎不全  
■ 24 糖尿病性ケトアシドーシス
付:原因不明の低血糖を診察する場合の注意 
■ 25 未熟児・新生児急患入院時の処置 
■ 26 気管支喘息の対症療法
付:急性細気管支炎  
■ 27 アナフィラキシー  
■ 28 クループ症候群  
■ 29 川崎病  
■ 30 肝不全  
■ 31 血友病  
■ 32 DIC  
■ 33 ITP
■ 34 食中毒・腸管感染症  
■ 35 薬物中毒  
■ 36 溺 水
■ 37 熱 傷
■ 38 耳鼻科的救急処置(鼻出血,急性中耳炎,異物)  
■ 39 簡単な点眼薬の使用法  
■ 40 簡単な皮膚外用薬の使用法  
■ 41 腸重積症,イレウス  
■ 42 外鼠径ヘルニア嵌頓の徒手整復(taxis)
■ 43 緊急時の向精神薬(不眠,興奮などに対して) 
■ 44 疼痛緩和  
■ 45 常用処方・薬剤  
■ 付1 抗菌・抗真菌・抗ウイルス薬剤一覧表 
■ 付2 ICU汎用薬  
■ 付3 緊急薬早見表  
■ 付4 使用薬剤の微量点滴静注用溶液作成法
■ 付5 抗菌薬等溶解基準(新生児病棟を除く) 
■ 付6 標準身長,体重,座高,頭囲  
■ 付7 体表面積表  
■ 付8 隔離を必要とする小児伝染性疾患早見表 
■ 付9 血管外漏出により組織傷害を起こす薬剤
(抗悪性腫瘍薬を除く)
■ 索 引

 まず、第1章で「小児救急トリアージ」が追加されました。また、第41章(旧第40章)で「腸重積症」が「腸重積症、イレウス」となっています。付属で、「抗菌薬等溶解基準(新生児病棟を除く) 」および「血管外漏出により組織傷害を起こす薬剤」が追加になりました。

 本の色調が、pinkからlightgreenに変わりました。


メトホルミンと青年期の肥満

Metformin Extended Release Treatment of Adolescent Obesity
A 48-Week Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial With 48-Week Follow-up
http://archpedi.ama-assn.org/cgi/content/abstract/164/2/116
Arch Pediatr Adolesc Med. 2010;164(2):116-123.

背景:メトホルミンは青年期肥満の治療薬として考えられている。しかし、長期的な対照研究は報告されていない。
目的:毎日48週間の塩酸メトホルミン徐放薬がプラセボと比べて、若者の肥満者たちのBMIを減少するかを試験する。
デザイン:他施設の任意抽出された、プラセボ対象の臨床試験
設定:2003年10月から2007年8月にかけて、Glaser Pediatric Researchの6施設で行われた。
参加者:肥満の(BMI95パーセンタイル以上)若者(13歳から18歳)が、治療群(39名)とプラセボ群に、無作為に割り当てられた。
治療:一ヶ月の導入期間の後、生活改善治療プログラムを受けた対象者らは、塩酸メトホルミン徐放薬一日一回2000mg48週間治療と同一のプラセボに無作為に選ばれた(比率は1:1)。対象者はさらに48週間追跡調査が行われた。
主要結果測定法:住居、性別、人種、民族性および年齢で修正したBMI変化をメトホルミン群とプラセボ群で比較した。
結果:48週間後、プラセボ群の修正BMIの平均(標準誤差)は0.2(0.5)増加し、メトホルミン徐放薬群では0.9(0.5)低下した(P=0.3)。この差異は治療中止後も12-24週にわたって続いた。身体組成・腹部脂肪およびインスリンインデックスに対する有意な効果は認めなかった。
結論:メトホルミン徐放薬は、生活改善治療プログラムを併用した場合、小さいが統計学的有意にBMIを減少させる。


コメント
 アブストラクトには記載されていませんが、治療中止後からその後48週目のBMIを比較してみると、治療群では0.5(0.5)の増加でプラセボ群では0.8(0.5)の減少で、逆の結果となりました。薬だけで永久に体質が変わるというわけではないようです。
 メトホルミンはビグアナイド系の糖尿病治療薬です。尿酸アシドーシスや低血糖が重篤な副作用だといわれていますが、今回の治療ではそういった副作用は出ませんでした(おなかの不具合などは出たようです)。
 日本での2型糖尿病の治療量はメトホルミン500-750mg/dayです。この実験での2000mg/dayがいかに多いかわかります。また、一日一回の投与ですむ徐放剤も日本では販売されていません。
 メトホルミンは2型糖尿病のみならず、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)にも効果があり、小児でも使用例があります(使用量まではわかりませんでした)。小児でも案外隠れNASHは多いと思われるので、今後メトホルミン治療の対象になるのでしょうか?
 小児のNASHの患者さんの生活を調べてみると、結構メディア漬けになっている人が多いと思います。この論文ではメトホルミン治療のほかにlifestyle intervention programを併用したと書いてありますが、小児の肥満治療は食事のみならずライフスタイルの変容も必要でしょう。プラセボ群で治療後にBMIが下がったのが気になりますが、ひょっとして「薬を飲んでもBMIが変わらない→プログラムどおりにライフスタイルを変えよう」と実行したのかもしれませんね。

2010年4月14日 (水)

下痢の時にはおなかを休ませる?働かせる?

おなかを壊したときには、皆さん何を食べますか?お子さんには何を食べさせますか?

 おかゆ?薄めたミルク?

 今までは、下痢の時にはおかゆや薄めたミルクを勧めていました。少し前は、BART(バナナ、りんご、米、トースト)というのも、ありました。下痢の時には、腸を休めたほうがいいと考えられて、食事をやめるときもありました。

 しかし、最近の考えでは、腸を休ませると腸管粘膜が萎縮し回復が遅れることがわかりました。絶食をすると結局、治療が遅れてしまうのです。最近は、食事も通常のものでも言いとされています。

 おかゆが悪いといっているのではありません。塩気のあるおかゆは、吸収にとてもいいです(しかし、薄めたミルクは治療を遅らせるかもしれませんし、を多量に飲ませるのは体の塩分が薄まってしまうかもしれません)。

 また、水分補給のためには、血液よりも薄い浸透圧で、適度な塩分と糖分が無いといけないことがわかりました。血液の浸透圧は280osm/kgですが、これより少し低いと腸から良く吸収されます。また、水分が腸の粘膜から能動的に吸収されるためには、ナトリウムとブドウ糖が必要なのです。こうして考え出されたのが、ORS(経口補水液)です。

 いくつかのORSがありますが、簡単なORSの作り方があります。

  1. 湯冷まし(清潔ならば煮沸しなくてもいい?)1リットル
  2. 砂糖40g(大匙4.5杯。大雑把に一握り分)
  3. 食塩3g(小さじ0.5杯。大雑把に一つまみ分)
  4. 果汁少々(個人的にはやや大目をおすすめ)

 これで、完成です。簡単に出来るし吸収もまずまずですが、非常にまずいです。果汁を多くしないと、とても飲めません。ポカリスエットが如何に美味しいか良くわかります。

(ポカリスエットは、塩分が少なく糖分が多いです。また浸透圧も血液よりも高いので、味はいいですが、吸収がいいとはいえません)。

 良薬は口に苦しです。頑張って飲むか(飲ませるか)、もう少し味の良いOS-1という市販の製品にしましょう。

 吐き気のあるときは、少しずつでいいのでORSを続けてみましょう。ティースプーン程度でもかまいませんので、何度も続けてみましょう。吐き気がおさまってから、食事を始めてください。食事の内容は前述のとおりあまり制限しませんが、果汁そのものは(浸透圧が高い)避けてください。

http://hobab.fc2web.com/sub4-ORS.htm

2010年4月13日 (火)

ポリオどうしますか?

 春になると、ポリオワクチンのシーズンです(ほかにも入学式とかお花見とか・・・)

 ポリオワクチンにはいろいろな思いがあるのですが、書き連ねていきます。

 以前日本でもポリオが流行し社会問題になっていた時がありました。1960年の時です。日本にはワクチンがないため、海外から輸入する必要がありました。ワクチンには口からの生ワクチン(OPV)と注射で行う不活化ワクチン(IPV)がありましたが、日本で緊急輸入されたのはOPVのでした。この件は本や映画にもなりました。
NHK記者であった上田哲氏の「根絶」
http://www.geocities.jp/hokukaido/konzetu/
その上田氏がモデルといわれる「われ一粒の麦なれど」
http://home.f05.itscom.net/kota2/jmov/1996_03/960302.html
日本とソ連(当時)の共同制作の「未来への伝言」
http://www.cdist.co.jp/film/010004/

 OPVの導入で、日本でポリオの自然発生はなくなりました。しかし、いろいろな問題が残りました。

1.回数が少ない:もともとOPVは3回接種するものです。緊急輸入した当時に二回の接種で流行が収まったので、そのまま二回接種になりました。十分な免疫がつかない可能性があります。

2.副反応:一般的にIPVよりもOPVの方が副反応が多いとされています。その一つは、VAPP(ワクチン関連麻痺: vaccine associated paralytic poliomyelitis)です。ポリオの生ワクチンで、ポリオになってしまうのです。数はわずかですが、避けることはできません。ワクチンのおかげでポリオは日本からなくなったはずなのに、ワクチンでポリオが発症するという事態が起きています。

3.ワクチンのウイルスが蔓延?:OPVは便から排出されます(ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV ; vaccine-derived poliovirus))。それをポリオの免疫が無い人に感染すると、ポリオになる可能性があります。実際、こどものオムツを取り替えたらポリオになったという人もいます。さらに怖いのはVDPVが、市井に流れることです(cVDPV circulating VDPV)。

http://www.npo-bmsa.org/wf061.shtml

 世界でまだポリオが流行している以上、ポリオワクチンを中止することはできません。先進国のみならず中進国といわれる国でのポリオワクチンは、より安全なIPVに移行しています。主要な国々でOPVを使っているのは日本だけでしょう。

 一刻も早い、OPVからIPVへの切替が望まれます。個人でIPVを接種したい方は、区内の個人クリニックで行っています。問い合わせてください。

SIDSの同時危険

http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/125/3/447

Concurrent Risks in Sudden Infant Death Syndrome
SIDSの同時危険

いつもながらの下手訳です。

要約
背景:安全な睡眠に関する教育が向上しているにもかかわらず、乳児たちはまだSIDSの多発しているリスクにさらされている。
目的:SIDSのリスクの頻度、共起リスクの傾向、修正可能なリスクと修正不可能なリスク間の関連およびリスクの無いケースの希少性などの関心を高める。
設計と方法:1996-2000年にニュージャージー州で起こった244ものSIDS例で、修正可能なリスク(父親母親の喫煙、仰向けではない姿勢で寝るか発見時にうつ伏せだった、ベッドの共有、または状況リスク(枕の使用など))と修正不可能なリスク(上気道感染や37週未満の在胎週数)の頻度や共起について評価した。
結果:仰向けではない姿勢で寝た場合は70.4%で起こっていた。発見時うつ伏せだった乳児は13例で、これらの症例を含めると76.1%に上昇する。その87%では他のリスクも含まれていた。母親の喫煙は42.6%であり、そのなかで98%は他のリスクを伴っていた。96%で少なくとも一つのリスクがあり、78%で2-7つのリスクがあった。完全なデータを元にすれば、リスクの無い症例はわずか2症例(0.8%)だった。修正できないリスクを除外すると、5.3%がこの基準に当てはまった。
結果:リスクの無いまたはリスクが一つだけのSIDSは珍しく、多くはいくつかのリスクを持っている。保護者の教育は、包括的に行い、修正できないリスクへの補償的戦略に取り組むべきである。


本文

結果(表参照)

表 2 SIDS症例のリスク因子

                                               
喫煙(%)
母親の喫煙42.6
父親の喫煙50.0
親(一人か両方)の喫煙60.3
上気道炎44.0
状況リスク31.5
在胎週数37週未満27.2
ベッドの添い寝38.9
状況リスク:キルト・毛布・枕・ソファーの使用および他の子どもたちの存在

表 3 リスクの共起(注:50%以上を赤くしました)

                                                                                                                                   
追加リスク追加リスクがある場合のリスクの割合(%)
非仰向け母親喫煙上気道炎状況父親喫煙在胎週数<37W添い寝
非仰向け 76.4   72.3   83.6   74.7   69.5   80.0  
母親喫煙44.2 40.2 53.6   69.4   54.6   53.1  
上気道炎40.8 39.3 28.8 41.0 40.4 45.0
状況36.1 40.2 20.9 37.1 28.3 43.0
父親喫煙50.4   85.5   47.2 58.9   59.1   54.6  
在胎週数<37W24.8 33.3 25.8 24.6 30.2 30.6
添い寝39.8 46.7 40.0 53.3 40.0 42.6  

議論
概観
1.    リスクの無いSIDSは、修正可能なリスクに限定しても、まれであった
2.    同時多発リスクが、大部分のケースであると分かった
3.    修正不可能なリスクは多くの場合修正可能なリスクを伴っていた

リスク減少教育
 修正可能リスクと修正不可能(在胎週数37週未満や上気道感染)なリスクの組み合わせは、介護人教育に示差を与える。
 NICUでは治療としてうつ伏せ寝をしているが退院後は仰向け寝に変えることを、家族に理解し受け入れてもらうように医療関係者が援助することを、APPのガイドラインではアドバイスしている。しかし、退院指導ではこの推奨を堅実に反映していないかもしれない。退院後も、外来診療のたびに、医師は他のリスク減少ガイダンスも使いながら、仰向けにすることを手助けし続ける必要がある。
 もう一つの修正不可能のリスクである上気道感染は症例のの44%に見られた。うつ伏せ寝と、最近の病気や感染との組み合わせは、個々のリスク因子で見られるレベルよりもSIDSのリスクを増大させる。我々の上気道炎症例乳児で、約四分の三は仰向け寝ではない状態に置かれていた。上気道炎を伴う症例では、44%の母親と47%の父親が喫煙をしていた。Winickoffらは、小児科医は煙暴露(smoke exprosure)について十分な質問やカウンセリングをしていないし、禁煙診療に行くように家族を援助しないと指摘した。さらに言えば、乳児のいる黒人家庭では家族内喫煙が白人やヒスパニックと比べて非常に多く、これらのグループ間でSIDS発症率に偏りがあるので、医療関係者は禁煙外来に行くように指導することでこの偏りを減らす必要がある。
 最後に、母乳は感染減少と関連がある。しかし、2005年に改定されたSIDSリスク減少ガイドラインでは、母乳が感染減少戦略となるという十分なエビデンスは無いと言及した。最近では、Vennemannらは、母乳はSIDSのリスクを50%まで減少したと指摘し、SIDSリスク減少ガイドラインに母乳についてのアドバイスを加えるよう推奨した。

研究の限界について
 死後すぐに集めたデータのため、時間に関連した思い出しバイアス(過去の事例を思い出すときに生じるバイアス)を我々は関心を寄せていなかった。この研究デザインでは生存中の乳児との比較は含まれていないため、これらのグループ間での相対的な思い出しバイアスの問題は無い。
 しかし、我々はスティグマにより過少報告されるリスクの可能性を考えなければならない。うつ伏せの状態で見つかった非常に若い乳児が、スティグマのため仰向けだったと報告される懸念について、我々は排除することはできない。しかしながら、潜在的なバイアスやデータ紛失にもかかわらず、ほとんどすべての症例でリスクは報告された。
 あお向け寝から発見時うつ伏せになっていた乳児の平均死亡年齢は、あお向け寝の乳児が寝返りを打てるようになる年齢(4-5ヶ月)よりも若かった。そのメカニズムは不明である。
 他の限界としては、我々の研究は記述的研究であり、ケースコントロール研究ではない。最後に、人口統計学的にニュージャージー州と相同ではないコミュニティーにこの研究結果を一般化することの危険性を、我々は呼びかける。

結果
 SIDS症例の調査で、多発リスク因子が明らかになった。多くの症例では一つ以上のリスクがあった。修正できないリスクは、修正できるリスクを伴い、さらに上昇したリスクとなって発生した。リスクの無い症例は珍しかった。これらの知見で、両親や他の医療関係者に広範囲なリスク減少の教育を提供することの重要性がわかる。APPのガイドライン・リスク減少のキャンペーン・死亡状況の調査技術、それに診断基準の向上で、SIDSのリスク様式の傾向を評価する更なる研究が必要である。単一のリスクだけではなく組み合わせのリスクの相対危険度を評価するため、ケースコントロール研究もまた必要である。


コメント

 NICUでの退院指導で、案外うつ伏せ寝の指導をあまりしてないのかもしれません。禁煙教育も大切ですね。肝に銘じなくてはいけません。

 SIDSの本当の日本語訳は乳児突然死症候群ですが、厚生労働省のガイドラインでは乳幼児突然死症候群となっています。定義上年齢は一才未満ですが、厚生労働省のガイドラインでは一才以上でも可能としています。日本と海外でのSIDSの定義は異なるため、海外との比較では注意が必要です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%B3%E5%B9%BC%E5%85%90%E7%AA%81%E7%84%B6%E6%AD%BB%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
 bed-sharingを「添い寝」と訳すべきか、悩みました。意図的な添い寝はco-sleepingであり、bed-sharingは「ベッドの共有」つまり(居眠りなどで)結果として共有したということも含まれます。
http://www.jalc-net.jp/dl/UKUnicef-bedsharing(hospital).pdf
 stigmaをどう表現しようかも悩みました。SIDSでお子さんを失ったご両親の悲しみ・怒りは、そう簡単に言い表せるものではありません。考えたのですが、あえてスティグマと表現しました。
http://www.sids.gr.jp/

 寝返りを打てるようになる年齢以下なのに、あお向け寝で発見時はうつ伏せだった症例があったのは驚きました。著者らは原因は不明としていますが、事故・事件にせよ外因的な力があったのではないかとおもいます(そうするとSIDSの定義から外れます)。

2010年4月11日 (日)

喘息にLABAは安全か?NEJMの論文から

最初に:基本的に下手訳なので、訳し方の突っ込みは勘弁してください。

The FDA and Safe Use of Long-Acting Beta-Agonists in the Treatment of Asthma

N ENGL J MED 362;13 1169-71
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMp1002074

(訳:抜粋)

 何十年もの間、FDAと医学界は長期作働方β刺激剤(LABAs)のどうやって安全に使用するかを議論してきた。
 アルブテロール(SABA)に比べサルメテロールで治療した患者での喘息関連死のリスクが増大していた。1994年にサルメテロールを認可してから短期間で、FDAはサルメテロールを使用した患者での深刻な喘息悪化や死亡の報告を受け取り始めた。ホルモテロールでのより小さな研究で深刻な喘息悪化(一部は挿管を必要とした)を示した。

 FDAはLABAsの利益は、薬が適切に使用されたときにリスクを上回り続け、この薬は喘息の治療薬として残るべきだと結論している。しかし、深刻なリスクのためICSのような喘息コントローラーで十分に管理できない喘息患者のために取っておくことをFDAは推奨する。さらに、大規模で無作為化された対照臨床試験(contorolled trial)でICSと同時に投与されたLABAsの安全性が評価できるまで、FDAは長期のLABAs使用を限定すべきだと信じている。FDAA(FDA改善法)の影響で、2010年2月18日FDAはアメリカで製造されているすべてのLABAsの専門的な効能書きの必要性を推奨した。

  1. すべての年齢でICSのような喘息コントローラーの同時使用なしのLABAの使用禁忌。
  2. 可能であれば、一度喘息のコントロールがICSなどで達成し維持できればLABAの中止
  3. 少量や中程度量のICSで適切にコントロールできている患者での、LABA使用を薦めない。
  4. ICSに加えてLABAを必要とする小児や思春期の患者では、併用療法のコンプライアンスを確実にするために、LABAとICSの量が固定された併用製品を推奨。

 これらにはいくつの理由がある。ひとつは、すでにLABAは喘息コントローラーなしでは使用しないというのは常識であるにもかかわらず、新しい禁忌ではLABA単独療法の重篤な危険性を強調している。二つ目は、LABAsのリスクは薬が思慮深く使用された場合リスクを最小限にでき、長期のLABAを必要としない患者はそのリスクにさらすべきではないとFDAは信じている。三つ目はLABAsの長期使用の患者は、喘息コントローラー薬でコントロールできない患者に限定すべきである。
 最後に、LABAとICSを別々に投与された場合、小児と思春期ではコンプライアンスを確保するのが難しいため、FDAはこれらの年齢でLABAとICSを含んだ併用製品を推奨している。

 このFDAの推奨は処方する医師たちに驚愕を与えた。というのは、喘息治療のガイドラインと現在の慣例では、LABAとステロイドの併用を必要とする患者ではICSをステップダウンすることに、焦点が置かれているからである。
 これらのガイドラインでは、LABAの利益は気流の改善やSABAs使用の減少などβ-刺激剤の効果でおおむね示されていた。LABA(単独またはICSの併用)で、生存率があがることや深刻な喘息悪化の改善に影響したという研究はない。

 LABAに関するまだ答えられてない重要な質問は、ICSの併用使用で喘息関連死亡率が和らぐかということである。いくつかの解析ではLABA単独使用に比べて喘息関連した深刻な有害事象が減少したことを示しているが、ほかの解析ではそうではない。

 深刻な喘息悪化と喘息関連死はLABAsのみということではない。SABAsは喘息の悪化を起こし喘息関連死の原因となるということは、50年以上知られている。原因は明らかではないが、SABAsは気管支収縮刺激に対する感受性を増加し、すなわち喘息悪化の症状をマスクすると仮定されている。リスクを最小限にするため、現在の喘息治療のガイドラインではアルブテロールやほかのSABAsは短期間の症状緩和のみに使用し、SABAsの使用を最小限にするため喘息コントローラー薬を使用することを推奨している。気管支拡張作用の時間を除いて、LABAsとSABAsの基本的薬理学的活性と臨床的活動は同じである。そのためFDAはLABAsの長期使用を薦めることに矛盾があると信じている(LABAsが喘息関連死のリスクを上げるのならば、なおさらである)。

LABAsの安全な使用のための新しい推奨を処方医師と患者に知ってもらうために、FDAはいくつかの行動をとろうとしている。

 ISC/LABAsの併用とICS単独治療と比べてのリスクを評価する臨床試験を実施することを、FDAはLABAsの製造者に要求するだろう。


注:
 喘息の治療のひとつに、β刺激薬があります。気管支を広げる作用があり、作用時間の違いから短期型(SABA)と長期型(LABA)に分けられます。以前からLABAの単独使用は危険といわれていましたが、吸入ステロイド(ICS)を併用すればいいというわけでもないようです。ただ、体感的にはLABAとICSの併用はかなり効果があります。患者さんの評価も高いです。

 記事で出ていたアルブテロールは別名サルブタモール(商品名はベネトリン)、サルメテロールは商品名セレベントです。ホルモテロールは経口では商品名アトックで、吸入では吸入ステロイド(ブデソニド)との合剤として商品名シンビコートと呼ばれています。日本でよく使われているSABAの一つ、プロカテロール(メプチン)はFDAの認可を受けていません。

 ICSとLABAの合剤でLABAの量を可変できる(fixed-doseではない)シンビコートはFDAの小児適応を受けていません。
http://www.gci-klug.jp/fxnews/detail.php?id=34698

 日本で使用できる’ fixed-dose combination product containing a LABA and an inhaled corticosteroid’ は、今のところアドエアのみです。
http://adoair.jp/

 しかし、現時点でシンビコートが小児で危険だとか、アドエアであれば絶対安全ということではありません。LABAは臨床的にはかなり有効ですが、注意して使うべきことには変わりありません。

2010年4月 8日 (木)

日本脳炎ワクチンについて考えてみる

日本脳炎ワクチンに関する年表です。(参照wikipedia)

 日本脳炎やADEMに関しては、こちらもご覧ください。
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/JEVMeeting.htm
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/WhatADEM.htm

 少しまとめてみます。

  1. もともと日本には日本脳炎が多かった。
  2. 日本脳炎ワクチンにより、日本脳炎の発症数は激減した。
  3. その結果、ワクチンの副反応が問題になり始めた。
  4. 日本脳炎ワクチンによる重篤な副反応と思われる事例があった。
  5. 日本脳炎「積極的勧奨の差し控え」という通知
  6. 日本脳炎の報告が増加
  7. 1期の推奨的接種の復活

 疑問が三つあります。一つは、日本脳炎ワクチンでADEMが起こったのか。もう一つは、「推奨的接種の差し控え」という通知は妥当だったのか。もう一つは、今まで「推奨的接種の差し控え」で接種できなかった世代に、何かしらの保障はあるのかということです。

1.日本脳炎ワクチンでADEMが起こったのか

 旧来の日本脳炎ワクチンは、マウスに日本脳炎を感染させ、その脳から作ったものです(マウス脳)。そのマウス脳からADEMが起こったといわれています。

 しかし、日本のワクチンは概して品質は良いです。日本脳炎ワクチンに含まれていたマウス脳の成分は、検出値以下です。これで、ADEMが起こると説明するのは難しいです。さらに昔のよりマウス脳が残っていたワクチンで、ADEMがより頻発していたというと、そうではありません。

 では、マウス脳を使わないワクチン(日本脳炎ワクチン以外でも)でADEMは起こらないかというと、そうではありません。特発性ADEM(原因不明)とワクチン接種時期が重なるという紛れ込みも知れませんが、それを証明することは難しいです。

 いかに優れたワクチンでもADEMなどの副反応を完全に否定することは、残念ながら出来ません。新型日本脳炎ワクチンであるジェービックVだからADEMはおきないということではありません。

2.「積極的勧奨の差し控え」という通知は妥当だったのか

  「積極的勧奨の差し控え」を読んで、すぐに理解できた人は何人いるでしょうか?

 禁忌でも中止でもない、かといって接種したほうが言いという文言も無い。でも日本脳炎になるリスクはあるから、外に出るときには長袖長ズボンをはいたほうがいい(日本脳炎は、ある種の蚊で感染するため)。

 これを書いた官僚は、自分の子供に真夏でも長袖長ズボンで外に出していたのでしょうか?日本脳炎ワクチンを接種しない代わりに長袖長ズボンを指導した接種医が、何人いるでしょう?想像しただけでも、この通知がおかしいことがわかります。

 本来であれば、「積極的勧奨の差し控え」という通知は出すべきではありませんでした。

3.今まで「推奨的接種の差し控え」で接種できなかった世代に、何かしらの保障はあるのか

 これに対しては、期待するしかないです。ただ、今のところ供給量が少ないのが気になります。

 行政やメーカーそれに小児科医が、子供達の安全を考えているのか、自らの保身を考えているのか、試されています。

2010年4月 6日 (火)

こんにちは

世田谷区の小児科医です。

そのほかのプロフィールは内緒。

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